JAL123-急減圧流は存在しないと「事故調は認識している」(9) ― 2016年03月22日
(修正) 「当記事の要点」を全部削除しました。<R5/2023-8-4>
「なくても良い」と判断しました。
同時に、「見出し」としての<当記事の要点><記事本文>も削除しました。
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https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2016/03/15/8049307
前回(第8回目)に引き続き、以下の部分を引用します。
『2.16.5 スタビライザ・ジャッキ・スクリュ・アクセス・ドアに関する調査』
(航空事故調査報告書 第1冊目 P.61~62)。
読みやすくするため、原文にない改行を、それぞれに加えています。
また、「表の部分」に、原文にない「仕切り線」を加えています。
(引用F)
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(6) ラッチ機構の製造者の定める要領に従って、プレッシャ・リリーフ・ドアの機能試験を実施した結果、プレッシャ・リリーフ・ドアは規定の199.6キログラム(440ポンド)に対して約110キログラム(3回の平均値)の荷重で開いた。
(7) ラッチ機構のローラ中心線上に加えられる荷重とドアが外気圧との差圧によって受ける圧力との関係は次のとおりである。
---------------------------------------------
ローラ中心線上の荷重 差圧
---------------------------------------------
199.6キログラム 約 1.2 psi
110 キログラム 約 0.7 psi
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(8) 同機の飛行中、異常事態発生前の客室と外気圧との差圧は、約 8.66 psi と推定される。
したがって、飛行中後部胴体内が客室の空気圧により加圧されたものとすると、当該ドアは開いたものと推定される。
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(引用、以上)
※「psi」とは、圧力の単位です。ポンド・パー・スクエア・インチ。
1psi ならば、1平方インチ当たり、1ポンドの圧力となります。
1psi = 0.07307 kg/cm2
(引用F、に対する説明1)
「引用Fの(7)」で、「ラッチ機構のローラ中心線上に加えられる荷重」とは、図1の荷重を指します。
図1 ラッチ機構に加える荷重
(出典: 『航空事故調査報告書 第1冊目 付図-33 プレッシャ・リリーフ・ドアのラッチ機構』 運輸省航空事故調査委員会、を引用・抜粋編集)
※※ 図を参照しながら、本文をご覧になる場合、当記事を 「二つのタブ」 で同時に開き、一方のタブを 「図の表示専用」 にすると、非常に便利です。
※ 図1に示す、「加える荷重の方向(緑色矢印の向き)」は、正しくありません。
事故調査報告書には、「ローラ中心線上に加えられる荷重」とあるだけで、どの方向に荷重を加えるか、記述していません。
そのため、加える荷重の方向は分りません。
取りあえず、見やすいように、真下に矢印を向けておきました。
※ 以下、必要があれば、「ラッチ機構」に関する、第6回目の記事を参照して下さい。
『JAL123-急減圧流は存在しないと「事故調は認識している」(6)』 2016年02月25日
https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2016/02/25/8028792
(引用F、に対する説明2)
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(7) ラッチ機構のローラ中心線上に加えられる荷重とドアが外気圧との差圧によって受ける圧力との関係は次のとおりである。
---------------------------------------------
ローラ中心線上の荷重 差圧
---------------------------------------------
199.6 キログラム 約 1.2 psi
110 キログラム 約 0.7 psi
---------------------------------------------------------------------------------
(引用、以上)
ボーイング社の規定では、圧力差が「約 1.2 psi」 に相当する、199.6 キログラム(440 ポンド)の荷重を加える試験方法を用いている、と解釈できます。
事故調が、実際に試験したところ、それよりかなり少ない「 110 キログラム(約 0.7 psi 相当)」で、「ラッチ機構」が動作したと述べています。
言うまでもなく、この時「プレッシャ・リリーフ・ドア」が開いたわけです。
第6回目の記事に、以下の引用文があります。
『JAL123-急減圧流は存在しないと「事故調は認識している」(6)』 2016年02月25日
https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2016/02/25/8028792
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(2) プレッシャ・リリーフ・ドアは、(中略)、製造仕様書によると、ラッチ機構は後部胴体内と外気圧との圧力差が 1.0 psi~1.5 psi のときラッチが外れる(ドアは開く。)よう定められている。
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(引用、以上)
この規定からすると、ドアが開くには、最低限「 1.0 psi」の圧力差が必要です。
「 110 キログラム(約 0.7 psi 相当)」で開くのは、早過ぎます。
規定を満たしていないことになります。
日本航空123便の機体が、墜落当日の飛行中、すでに、この「規定を満たしていない」状態だったのか、それとも、墜落時の衝撃や、墜落に至るまでの飛行中の衝撃などによって、結果的に「規定を満たさない状態」になったのか、分りません。
事故調は、「墜落当日の飛行中、すでに、この状態だった」と解釈しているのは、明らかです。
ただし、この部分に関しては、事故調の「トリック」とは無関係であり、問題視する必要はありません。
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(分析F)(トリック5) ※ 「トリックあり」を、「トリック5」に変更 2016-4-22
問題なのは、「引用F」で、以下の部分です。
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(8) 同機の飛行中、異常事態発生前の客室と外気圧との差圧は、約 8.66 psiと推定される。
したがって、飛行中後部胴体内が客室の空気圧により加圧されたものとすると、当該ドアは開いたものと推定される。
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(引用、以上)
「引用F」の(7)で、事故調が試験したところ、「110 キログラム(約 0.7 psi 相当)」の荷重で、「ラッチ機構」が動作した、つまり、プレッシャ・リリーフ・ドアが開いた、と事実上述べています。
それを受けて、上記のとおり、「引用F」の(8)で、「同機の飛行中、異常事態発生前の客室と外気圧との差圧は、約 8.66 psi と推定される。」と述べています。
この二つの記述に基づき、「したがって、飛行中後部胴体内が客室の空気圧により加圧されたものとすると、当該ドアは開いたものと推定される。」と、結論づけています。
つまり、「約 0.7 psi の圧力差で、ドアが開く状況にあった」ところ、「異常事態発生によって、約 8.66 psi の圧力が加わった」、そのため、「当然ながら、ドアが開いた」と推定する、これが事故調の結論です。
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ここに、「極めて大きなトリック」が存在します。
事故調は、「一番肝心な数値」を、意識的に「隠して」います。
図2を見て下さい。
図2 ドアに関する、ABC3点の圧力相互関係
(出典: 『航空事故調査報告書 第1冊目 付図-7 尾翼ステーション図』 運輸省航空事故調査委員会、を引用・抜粋編集)
この図で、「一番肝心な数値」とは、「(B)後部胴体の内側の圧力」です。
(B)後部胴体の内側の圧力
(C)外気圧
この2つの圧力差が、「 1.0 psi~1.5 psi」の時、プレッシャ・リリーフ・ドアが自動的に開く構造になっています。
「引用F」で、以下の部分、を再度引用します。
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(8) 同機の飛行中、異常事態発生前の客室と外気圧との差圧は、約 8.66 psiと推定される。
したがって、飛行中後部胴体内が客室の空気圧により加圧されたものとすると、当該ドアは開いたものと推定される。
---------------------------------------------------------------------------------
(引用、以上)
ここで、「異常事態発生前の『客室と外気圧との差圧』は、約 8.66 psiと推定される」に着目して下さい。
図2では、次の部分に相当します。
(A)客室内圧力
(C)外気圧
一番肝心な「(B)後部胴体の内側の圧力」が、すっぽり抜けています。
事故調査報告書では、「(B)後部胴体の内側の圧力」が、「約 8.66 psi と推定される」とは、一言も言っていません。
くどいようですが、
(B)後部胴体の内側の圧力
(C)外気圧
この2つの圧力差が「 1.0psi~1.5psi」の時、プレッシャ・リリーフ・ドアが自動的に開く構造になっているのです。
(A)客室内圧力
(C)外気圧
この2つの圧力差が「 1.0psi~1.5psi」の時、プレッシャ・リリーフ・ドアが自動的に開く構造になっている、のではありません。
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「後部圧力隔壁」の言葉を、良く見て下さい。
「壁」の文字があります。
いったい、何の壁なのか?
「隔(へだ)てる」ための壁です。
いったい、何を「隔てる」のか?
「客室内」と、「客室外」を隔てるための壁です。
「客室内」は「与圧しています」。
「客室外」は「与圧していません」。
「隔てないと」、この関係が崩れてしまいます。
それを防ぐために、「圧力を隔てるための壁」を、この位置(胴体後部)に設けています。
それが、「後部圧力隔壁」です。
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もし、「後部圧力隔壁」が正常ならば、図2で、「(A)客室内圧力」は、事故調査報告書のとおり、約 8.66 psi と言えます。
一方、「(B)後部胴体の内側の圧力」は、約 8.66 psi ではありません。
「(C)外気圧」と同じか、あるいは、ほぼ同じとなります。
なぜならば、「(B)後部胴体の内側」の領域は、後部圧力隔壁の外側であり、「与圧していない」からです。
※ 説明を簡素化するために、以下、「(C)外気圧と同じ」と表現しておきます。
(B)後部胴体の内側の圧力
(C)外気圧
この両圧力が、同じならば、当然ながら、プレッシャ・リリーフ・ドアは開きません。
ところが、事故調は「修理ミスにより、飛行中に後部圧力隔壁が破壊された」と主張しています。
そのため、プレッシャ・リリーフ・ドアが開いたと結論づけています。
しかしながら、そのためには、「(B)後部胴体の内側の圧力」が、「何 psi 」だったのか、明示する必要があります。
もし、「(B)後部胴体の内側の圧力」が、「(C)外気圧」に比べて、差圧が「 1.0psi~1.5psi」以上の大きさがあれば、プレッシャ・リリーフ・ドアは開きます。
ところが、「(B)後部胴体の内側の圧力」が、「(C)外気圧」に比べて、差圧が「 1.0psi~1.5psi」よりも小さければ、ボーイング社の規定に基づく限り、プレッシャ・リリーフ・ドアは開きません。
ただし、前述のように、事故調が試験をしたところ、実際には、それより小さい「約 0.7 psi 」で開きました。
この試験結果を踏まえて考えるならば、「(B)後部胴体の内側の圧力」が、「(C)外気圧」に比べて、差圧が「 約 0.7 psi 」以上あったと、事故調が実証する必要があります。
そうでなければ、推定・断定のいずれであっても、「プレッシャ・リリーフ・ドアが開いた」と言うことは出来ません。
ところが、「引用Fの(8)」では、
(A)客室内圧力
(C)外気圧
の、2点しか記述していません。
一番肝心な「(B)後部胴体の内側の圧力」を記述せず、伏せています。
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なぜ、伏せているのか。
言うまでもなく、
(B)後部胴体の内側の圧力
(C)外気圧
この両圧力が、「同じ」だからです。
「同じ」ということは、プレッシャ・リリーフ・ドアが「開いていない」ということです。
プレッシャ・リリーフ・ドアが「開いていない」ということは、「急減圧流が存在しない」ということです。
「引用F」で、以下を、もう一度見て下さい。
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(8) 同機の飛行中、異常事態発生前の客室と外気圧との差圧は、約 8.66 psiと推定される。
したがって、飛行中後部胴体内が客室の空気圧により加圧されたものとすると、当該ドアは開いたものと推定される。
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(引用、以上)
(A)客室内圧力
(C)外気圧
この2点は、言明しています。
(B)後部胴体の内側の圧力
これは、まったく触れていません。
ところが、この引用部分を読んだ(ここまで、事故調査報告書を読み進んだ)、大多数の人々は、以下のように受け止めるはずです。
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これならば、プレッシャ・リリーフ・ドアに、「約 8.66 psi」の圧力が加わったのは間違いない。
それなら、ドアが開いたのは、当然だ。
したがって、「急減圧流」が生じたのは、間違いない。
事故調の言うとおり、「修理ミスにより、飛行中に後部圧力隔壁が破壊された」のは、間違いない。
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(分析F、に対する結論)(トリック5、に対する結論)
※ 「トリック5、に対する結論」を追加 2016-4-22
(1)「急減圧流」は生じていないので、「(B)後部胴体の内側の圧力」は、「(C)外気圧」と同じか、または、ほぼ同じと言える。
(2)したがって、プレッシャ・リリーフ・ドアは開かない。
(3)それを隠すために、「(B)後部胴体の内側の圧力」がいくらなのか、事故調は、まったく言及せず、意識的に伏せた。
(4)下記、2点の圧力に言及し、一方では、「(B)後部胴体の内側の圧力」を伏せることによって、「(B)後部胴体の内側の圧力」も、「(A)客室内圧力」と同じ「約 8.66 psi」であると、事故調査報告書の読み手を「無意識に思い込ませようとした」。
(A)客室内圧力
(C)外気圧
(5)上記(4)の目的は、「(B)後部胴体の内側の圧力が、約 8.66 psi ならば、当然、プレッシャ・リリーフ・ドアは開いた」と読み手に思い込ませるため。
(6)事故調は、「急減圧流」が存在していないと、認識している。
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「引用F」に関する分析は、まだ先があるので、次回も行います。
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<長文のため、第10回目に続きます>
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