JAL123-スコーク77に関する、大きな「虚論」(7/8) ― 2015年12月16日
(修正) 「当記事の要点」を全部削除しました。<R5/2023-8-4>
「なくても良い」と判断しました。
同時に、「見出し」としての<当記事の要点><記事本文>も削除しました。
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前回(6/8)に引き続き、池田著書の具体的な問題点の分析を行います。
池田昌昭著『御巣鷹山ファイル2-JAL123便は自衛隊が撃墜した』(文芸社)
同書P.63 『3 要撃軍用機』を引用します。
(引用F)
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JAL123便は、優秀なレーダーを備えていて自機の位置が分からなくなっていたとは考えにくい。
もし仮に分からなくなっていても、最終段階近くで自機の位置をリクエストするのは不自然な気もします。
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(分析F)
[引用Fで、1行目について]
日本航空123便に限らず、ジェット旅客機はレーダーを搭載しています。
しかし、優秀であるないに関わらず、気象用のレーダーです。
現在位置を知るためのものではありません。
ただし、「グランド・マッピング・モード」に切り替えると、レーダー画面に地形が映るので、現在位置を知ることが出来ます。
しかし、おおざっぱな位置しか分りません。
必要とする基準点からの距離など、細かい精密な数値までは、分りません。
(出典: 『ザ・コクピット』2003年1月1日 イカロス出版)
操縦席の大きさ(人間の大きさ)から、レーダー表示器の大きさを想像して下さい。
以下に、拡大図を示します。
図2 図1の拡大図
図3 123便当時のレーダー表示器
(出典: 『航空工学講座10 航空電子・電気装備』 日本航空技術協会)
当時は、このような、古めかしい丸形ブラウン管型式の表示器です。
機体の大きさは変わらないので、表示器の大きさも似たようなものです。
図4 下北半島のレーダー表示画像
(出典: 『航空電子装置』 岡田実編 日刊工業新聞社)
前述の「グランド・マッピング・モード」で、下北半島を映した時のレーダー画像です。
図のように、特徴のある海岸線が映れば、現在位置を、かなり正確に判断出来るかと思います。
しかし、図2、図3のように、画面のサイズが、さほど大きなものではないので、あまり細かい状況は把握しきれません。
さらに、内陸部で、海岸線が映らなければ、より一層判断が難しくなります。
現在位置を把握しきれなくても、不思議ではありません。
まして、123便は、「操縦不能」の状態で、必死に飛行をしていたはずです。
レーダーで「じっくり」映像を見ている余裕はないはずです。
図4 現代のレーダー表示器画面
(出典: 『ザ・コクピット』2003年1月1日 イカロス出版)
現代使用されている、ボーイング777型機のレーダー画像です。
後述する、「航法」用のデーターと同時に、表示しています。
緑色、黄色などの背景画像のような映像が、レーダーが受信した信号を、機上のコンピュータで処理した映像です。
白い直線や、さまざまな色の文字、記号などは、「航法」用のデーターです。
白色の同心円は、機首から見た距離を表しています。
図5 ボーイング747型機のレーダー映像表示位置
(出典: 『ザ・コクピット』2003年1月1日 イカロス出版)
図4とは機種が異なりますが、図4と同様に、「航法」用のデーターと同時に、表示するようになっています。
[航法について]
航空機が、現在位置を知る手法、さらには、現在位置に基づいて、飛行方向(飛行コース)を知るための手法を「航法」と言います。
航法には、いろいろな種類があります。
・地文航法
・推測航法
・天測航法
・無線航法
・双曲線航法
・オメガ航法
・ドップラー航法
・グリッド航法
・慣性航法
・GPS航法(R-NAV航法)
いずれの航法も、気象用レーダーの「グランド・マッピング・モード」とは、無関係です。
しいて言えば、「地文航法」は関係があるとも言えますが、そもそも、レーダーを搭載している高性能な機体ならば、「原始的」とも言える「地文航法」と「グランド・マッピング・モード」を併用するのは、現実的ではないはずです。
航空機の現在位置を知る手法として、気象用レーダーの「グランド・マッピング・モード」は、あくまでも「補助的手段」に過ぎません。
「グランド・マッピング・モード」では、前述のとおり、正確な位置は、把握が困難です。
正確な位置とは、緯度・経度で言えば、「何度、何分、何秒」です。
「秒」の単位まで分らなければ、意味がありません。
方位で言えば、「何百、何十、何度」です。
「度」の単位まで分らなければ、意味がありません。
距離で言えば、「何百、何十、何マイル」です。
「マイル」の単位まで分らなければ、意味がありません。
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JAL123便は、優秀なレーダーを備えていて自機の位置が分からなくなっていたとは考えにくい。
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これは、著者の無意味な誤解です。
[引用Fで、2行目について]
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…… 最終段階近くで自機の位置をリクエストするのは不自然な気もします。
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いわゆる「迷走飛行」をしている最中には、123便の乗員はもとより、誰にも、「いつが最終段階か」分るはずがありません。
墜落した後に、初めて「あの時が最終段階だった」と知ったのは、言うまでもありません。
したがって、著者の主張は、航空技術の問題ではなく、それ以前の、「日本語として」まったく筋が通りません。
さらには、123便に限らず、運航乗員が、管制機関に対して、現在位置をリクエストするのは、いつでも自由に行えます。
「初期段階」であろうが、「中間」であろうが、「最終」であろうが、いつでも自由です。
著者の主張は、まったく現実離れした無意味な論理です。
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JAL123-スコーク77に関する、大きな「虚論」(6/8) ― 2015年12月15日
(修正) 「当記事の要点」を全部削除しました。<R5/2023-8-4>
「なくても良い」と判断しました。
同時に、「見出し」としての<当記事の要点><記事本文>も削除しました。
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前回(5/8)に引き続き、池田著書の具体的な問題点の分析を行います。
池田昌昭著『御巣鷹山ファイル2-JAL123便は自衛隊が撃墜した』(文芸社)
同書P.61 『2 被要撃信号「スコーク77」』を引用します。
(引用E)
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「ドーン」という衝撃音だけなら何も被要撃信号「スコーク77」を発することは必ずしもないと思える。
管制所に「アンコントロール(操縦不能)」を連絡するのが普通と思える。
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(分析E)
冗談ではありません。
日本航空123便に限らず、飛行中の航空機が「アンコントロール(操縦不能)」に陥ったら、それは極めて重大な、命に関わる「緊急事態」です。
操縦ができなければ、やがて「墜落する」しかありません。
「遭難」そのものです。
ただちに、「遭難信号」である、スコーク7700を送信するのが当然です。
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…… 何も被要撃信号「スコーク77」を発することは必ずしもないと思える。
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これは、とんでもない「暴論」です。
著者は、スコーク7700を「被要撃信号」と思い込んでいるから、このような暴論を平然と吹聴するのです。
別の視点から見れば、航空機側が管制機関に「アンコントロール(操縦不能)」を通報したら、管制官は、間違いなく「この機が遭難した」と判定します。
それは、とりもなおさず、スコーク7700を「送信した」のと、同じ意味を持つのです。
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……「スコーク77」を発することは必ずしもないと思える。
管制所に「アンコントロール(操縦不能)」を連絡するのが普通と思える。
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むちゃくちゃな「暴論」です。
例え話で表現すれば、火事が発生し、119番に電話した時、「○○が燃えてます」と通報するのが普通であり、「火事だ、助けてくれ!!」と電話口で叫ぶ人など、いるはずがない、と平然と冷酷に主張するようなものです。
著者の、この主張は、「セクハラ」や「ヘイト・スピーチ」と同じ、「言葉の暴力」と言っても過言ではありません。
著者が、それをまったく認識していないだけです。
上記の引用部を読んだ時、子どものころから飛行機が好きだった私は、「身の毛がよだつ」思いがしました。
冗談ではなく、本当に「寒気」がしました。
本来ならば、このような発言は、決して行ってはなりませんが、「ふざけるな、この野郎。乗員乗客、全員を殺す気かっ。テメエ!!!!!」と、怒鳴りつけてやりたい心境です。
著者は、自分が「何を言っているのか」まったく分っていません。
分ろうとも、していません。
ただ、自分の言いたいことを、言いたいだけ言えば、それで良いと思っています。
その結果、社会に対して、多大な「虚論」をまき散らしているのです。
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「ドーン」という衝撃音だけなら何も被要撃信号「スコーク77」を発することは必ずしもないと思える。
管制所に「アンコントロール(操縦不能)」を連絡するのが普通と思える。
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著者は、「普通」という言葉の意味が分っていません。
123便に限らず、飛行中の航空機で、「ドーン」という大きな異常音がしたら、一大事です。
決して、「普通の出来事」ではあり得ません。
完全に、「異常な出来事」です。
「アンコントロール(操縦不能)」を連絡するのも、決して「普通の出来事」ではありません。
本来なら、起こり得ない、完全に「異常な出来事」です。
「……普通と思える」とは、決して言える状況ではあり得ません。
著者は、航空技術以前に、「日本語」が分っていないと、言わざるを得ません。
上記の引用部は、たった二つの文でありながら、このように、いくつもの「虚論」が重なり合っています。
[留意点]
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「ドーン」という衝撃音だけなら何も被要撃信号「スコーク77」を発することは必ずしもないと思える。
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「被要撃信号」の部分を別にすれば、著者の指摘は、ある程度正論と言えます。
それどころか、「ドーン」という衝撃音が聞こえただけで、ただちにスコーク7700を送信したのは、明らかに早過ぎます。
本来ならば、衝撃音の原因を探し、それに基づき、対応策を取るのが先です。
いきなり、スコーク7700を送信したのは、123便の運航乗員たちが「衝撃音の原因をすでに知っていた」可能性を強く示唆しています。
だからこそ、海上自衛隊の無人標的機が、誤って123便に衝突したとの説が、根強く言われているのです。
私自身は、何がぶつかったかは別として、「誤射に見せかけた、意図的な攻撃」と受け止めています。
既存の記事:
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JAL123-スコーク77に関する、大きな「虚論」(5/8) ― 2015年12月14日
(修正) 「当記事の要点」を全部削除しました。<R5/2023-8-4>
「なくても良い」と判断しました。
同時に、「見出し」としての<当記事の要点><記事本文>も削除しました。
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池田昌昭著『御巣鷹山ファイル2-JAL123便は自衛隊が撃墜した』(文芸社)
同書P.60 『2 被要撃信号「スコーク77」』を引用します。
(引用D)
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要撃軍用機が使用する言語は「当方に従え」「着陸のため降下せよ」「この飛行場に着陸せよ」「そのまま飛行してよい」である。
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(分析D)
著者は、上記の「4語」しか、要撃機は使わない、つまり「これ以外は、使えない」と思い込んでいます。
これは、著者の完全な思い違いです。
要撃機は、どのような言葉でも、自由に使えます。
「4語しか使えない」ことは、絶対にあり得ません。
著者は、ICAOの規定を、完全に取り違えています。
(3/8)で前述した、「国際民間航空条約・第2附属書 『航空規則』」の中に、「添付A 民間航空機の邀撃(ようげき)」の規定があります。
その中で、「A-1表」の「邀撃機が使用する用語」を引用します。
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<用語> <意味>
CALL SIGN 貴方の呼出符号は?
FOLLOW 当方に従え
DESCEND 着陸のため降下せよ
YOU LAND この飛行場に着陸せよ
PROCEED そのまま飛行してよい
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※この資料は、第10版(2005年11月版)なので、123便が墜落した昭和60年(1985年)当時は、一番上の行「CALL SIGN 貴方の呼出符号は?」は、存在しなかった可能性があります(注)。
※「呼出符号(コールサイン)」とは、無線通信を行う時に使う、自機を表すための「名前」です。
(注)1985年版の『AIM-JAPAN』を引用します。
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740. 軍用機の要撃を受けた場合の措置
741.パイロットの措置
a)~d)省略
e)要撃機との通信は設定されたが、運用語による意思の伝達ができない場合、次の用語および発音を使用して要撃機の指示の確認に努める。
(中略)
注3)次の用語は、上述した状況下にある要撃機により使用される場合がある。
<用語> <意味>
FOLLOW 我方に従え
DESCEND 着陸のために降下せよ
YOU LAND この飛行場に着陸せよ
PROCEED そのまま飛行してよい
※「発音」は省略。
※「運用語」とは、自分たちが通常使っている言語。日本人なら「日本語」、航空管制用語ならば「英語」。
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※上記のとおり、「5語」ではなく「4語」だけ規定しています。
したがって、123便当時は、「5語」ではなく「4語」しかなかったものと思います。
※『AIM-JAPAN』は、「日本航空機操縦士協会」が発行する、小型機パイロットなどを主対象とする、「飛行の手引き(マニュアル)」です。
※AIM=エアマンズ・インフォメーション・マニュアル
※現在は、同じAIMですが、少し変わっています。
アエロノーチカル・インフォメーション・マニュアル
前記、ICAOの規定する「用語」を見ると、一見、著者の主張が正しいように思えます。
しかし、そうではありません。
なぜ、ICAOがこの用語を規定したかを理解する必要があります。
日本に限らず、どこの国であっても、要撃機と、外側から自国の「防空識別圏」に接近してくる被要撃機とでは、多くの場合、所属する国籍が異なります。
日本では、要撃機は自衛隊、つまり国籍は「日本」です。
それに対して、日本の防空識別圏に外側から接近してくる「被要撃機」は、例えば、ロシア機や中国機です。
国籍は、「ロシア」や「中国」です。
当然、双方が使用する言語は、「日本語対ロシア語」であり、「日本語対中国語」です。
そのままでは、要撃機と、被要撃機との間で、無線による会話が成り立ちません。
それを防ぐために、どこの国の人間でも使える、「万国共通の用語」として、上記の用語をICAOが規定したのです。
日本に限らず、全世界の要撃において、お互いに言葉が通じなくても、最小限、この4種(現在は5種)の用語を用いれば、相手が、イタリア国籍であろうが、ブラジル国籍であろうが、インドネシア国籍であろうが、モーリタニア国籍であろうが、最小限の会話(意思の伝達)が可能となります。
したがって、要撃側は、これ以外の用語を使えないのでは、決してありません。
相手に通じるならば、どのような用語を使っても、一向に差し支えありません。
相手に通じるならば、どの国の言語を使っても差し支えありません。
123便に対して、著者が主張するように、自衛隊が要撃したのならば、同じ日本人同士です。日本語で、自由に、思う存分会話が可能です。
なおさら、「4語しか使えない」のは、現実離れした、まったく無意味な主張です。
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<長文のため、8分割しています>
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