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JAL123-事故調査報告書「ボイス・レコーダ記録」を見ると、「急減圧流は存在しない」と解釈できる(4)2018年02月09日

[カテゴリ: JAL123便>CVR記録]

第3回目の記事から続きます。
https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2017/12/23/8753918

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大変お待たせしました。

しかしながら、今回(第4回目)の記事は、「番外編」 とも言えます。

前回(第3回目)で、「引用D」 を掲示しました。

この引用文中に、「注記を16件」 加えました。

そのため、引用した原文が、「注記で多数に分割され、非常に読みづらく」 なりました。

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そこで、「16件の注記」 を、すべて、「引用文の後」 に一括表示しました。

それが、後述の 「引用D-1」 です。

「引用した原文」 は、当然ながら、前回(第3回目)記事の 「引用D」 と同じです。

「16件の注記」 も、内容は同じです。

ただし、大半は、「図を追加」 しています。

「この追加図」 の一部は、「既存の記事で掲示した」 ものと同じです。

それ以外は、「新たな図」 です。

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先般、下記 「連絡事項」 の記事でお知らせした通り、第3回目の記事中で、「注6に関して、修正」 を行いました。

そのため、今回(第4回目)の記事では、「注6」は、「修正を加えた後の文章」 に変更しています。

具体的な変更内容は、お手数ですが、「第3回目の記事」(下記にURL) をご参照願います。

(既存の記事A)
『【連絡事項】 昨年の記事『JAL123-事故調査報告書「ボイス・レコーダ記録」…… 解釈できる(3)』で、修正が1件あります』
2018年01月06日
https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2018/01/06/8763308

(既存の記事B)
『JAL123-事故調査報告書「ボイス・レコーダ記録」を見ると、「急減圧流は存在しない」と解釈できる(3)』
2017年12月23日
https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2017/12/23/8753918

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※ 「図の追加」 を行った注記は、以下の通りです。

(注1)(注2)(注3)(注4) (注7)(注8) (注10)(注11) (注13)(注14)
(注6)文章の修正のみ
(注9)文の追加のみ

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以下、当記事の本題です。

出典: 米田憲司 ・ 著 『御巣鷹の謎を追う 日航123便事故20年』 (宝島社)

※ 「印刷物である、同書の誌面レイアウト」 を、そのまま、当ブログ画面上で用いると、かえって分かりづらくなるので、少し変更しています。
※ 引用文中で、<説明文> の表示は、原文にはありません。
※ 原文では、「説明文」 に相当する部分全体を 「かぎかっこ」 で囲む表現をしています。
※ <著者の発言文>  の表示も、原文にはありません。

※ 必要に応じて、「原文にない改行」 を加えています。

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※※ 「注記」 を参照しながら、本文をご覧になる場合、当記事を 「二つのタブ」 で同時に開き、一方のタブを 「注記の表示専用」 にすると、非常に便利です。


(引用D-1)(上記の出典139~142ページ)
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■ 全日空の急減圧発生訓練

どの航空会社でも、運航乗員は片方のエンジンがトラブルを起こしてストップしたときの対応や機体が損傷して機内の空気が一気に外に吐き出されることによって起きる急減圧の対応訓練をシミュレーター(模擬飛行装置)を使って行なっている。

(中略)

ここでは、全日空の運航乗員に急減圧に対処する典型的な訓練の方法を聞いたので紹介したい。


★何かの原因で急減圧が発生したと想定。

機長   「どうした 何が起こった」
副操縦士 「ラピッド デコンプレッション」(急減圧だ)
機長   「マスク オン」(酸素マスクをつけろ)

<説明文>
この間、航空機関士は数秒で空気漏れが原因となった減圧を想定して、四基のエンジンから抽出される空気(注1)を共通ダクトに集め、共通ダクトに二個装備されている分離弁の一方を閉じる。

そうすることによって、分離弁より下流に空気漏れがあった場合は正常なダクトが空気を供給するので、減圧を停止することができる。

また、三個装備されている与圧装置すべてを作動させることによって、減圧の程度を緩和する場合もある

航空機関士はこれらの操作をしても減圧が回復できないときは、機長に報告する。


機長 「OK。緊急降下実施。1万3000フィートまで降下する。ATCトランスポンダーを7700(緊急事態発生コード番号)にセットせよ(注2)

<説明文>
機長はオートスロットル=自動推力装置を外し、エンジンをアイドル(注3)にし、スピードブレーキ(注4)を開いて交差する航空機と衝突の可能性の少ないほうへ変針し、急降下を開始する。

副操縦士は安全ベルト着用サインを点灯させ、ATCトランスポンダーを7700にセットし、ATC〈東京航空交通管制部〉機関(注5)に緊急降下を通告する。


副操縦士 「東京航空交通管制部(注6)、こちら全日空000便。急減圧発生。緊急降下を開始した。1万3000フィー卜まで降下する」
ATC  「了解。全日空000便、緊急降下を承認する。1万3000フィー卜まで降下せよ。到達したら一報せよ」

<説明文>
この間、航空機関士は十五秒から二〇秒以内に最低回転数に絞ったエンジンが停止しないように点火装置のスイッチをオンにしておく(注7)

また、客室高度を確認し、1万3000フィートを超えていれば(注8)乗客用酸素マスクが自動的にドロップしていることを確認する。

作動していなければ、スイッチを操作してマスクをドロップさせる。


機長  「航空機関士は急減圧・緊急降下のチェックリストを実施せよ」(注9)
機関士 「了解」

<説明文>
航空機関士は該当するチェックリストに従って無言でチェックする。

無言のチェックは極めて緊急性を要求する事態であるため、パイロットには機の操縦に専念させ、余計な負担をかけさせないためである。


機長  「状況を点検して知らせよ」
機関士 「依然として機内与圧はコントロールできない。機体に損傷はない」 もしくは 「機体に重大な損傷がある」

<説明文>
機長は機体に損傷がなければ車輪を降ろして降下率を深める操作を、機体に重大な損傷があれば、車輪は格納したまま、あまり深すぎない降下率で急降下する。(注10)

航空機関士は機長の指示に従って、操作に手抜かりがないかを確認していく。

これは緊急降下開始後から操作してきた共通ダクトの分離弁の閉鎖、すべての与圧装置の作動、安全ベルト着用サインの点灯、酸素マスクの作動、エンジン点火装置の作動スイッチオン、車輪の状態確認、自動操縦装置の使用有無、速度が限界を超えていないか、スコーク7700のセット、バンク角が45度を超えていないこと(注11)などを再確認する。


機関士 「確認終了」
機長  「了解」

<説明文>
機体が1万3000フィートまで、あと2000フィートに近づいたとき。


副操縦士  「目標高度の2000フィート手前」
副操縦士  「目標高度の1000フィート手前」

<説明文>
機長は目標高度で巡航に切り替えるためにスピードブレーキを元に戻し、降下率を緩和し始め、適当な時期にパワーをアップし、他の乗員に速度、出力を提示する。

機体が水平飛行に移行した段階になると。


機長 「チェックリストの残りを実施せよ」(注12)

<説明文>
航空機関士はスピードブレーキがダウン位置に格納されていることの確認、車輪引き上げの確認、高度計の気圧補正=飛行中の地域の気圧による高度計の補正(注13)=を行う。

乗員酸素供給システムを純酸素から空気と酸素の混合供給に切り替える(注14)などを確認し、報告する。


機長 「状況を知らせよ」

<説明文>
機体が1万3000フィートまで下りていても、客室高度はまだ酸素マスクがドロップする高さであるため、さらに安全な一万フィートまで降下することになる(注15)


機関士  「客室高度1万3000フィートのまま」
機長   「了解、1万フィートに降下する」
副操縦士 「束京コントロール、全日空000便、1万フィートまでの降下を要求する。依然として与圧装置をコントロールできない」
ATC  「全日空000便、許可する。降下し、1万フィートを維持せよ」
機長   「1万フィートに到達したら客室に酸素マスクを外してよいと連絡を。乗客の状態、客室の様子を聞いてくれ」

<説明文>
副操縦士または航空機関士は、インターホンを使って客室乗務員に酸素マスクを外しても支障のない旨を伝え、客室の状況を確認。機長に報告する。


機長 「オキシジェンマスク オフ」(運航乗員の酸素マスクを外してもよろしい)

<説明文>
まず、副操縦士と航空機関士がマスクを外し、その間は機長が単独で機の操縦を行なう。

副操縦士と航空機関士がマスクを格納したらその旨をコールする。

そのコールを確認して機長は操縦を一時、交替することを指示。


機長   「操縦を交替せよ」
副操縦士 「こちらが操縦を引き受けた」

<説明文>
機長は自分のマスクを外して格納する。


機長 「操縦を代わる」(注16)

<説明文>
これ以降は 「緊急事態」 を脱出できたので相談しながらその後のフライトについて打ち合わせる。


<著者の発言文>
典型的な急減圧発生時の操縦マニュアルである。

123便のボイスレコーダーの会話と比較すると、まったく急減圧が起きている事態とはかけ離れていることがよく分かる。
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(引用D-1、以上)


※※ 以下の「注1~16」 を参照しながら、「引用D-1」 をご覧になる場合、当記事を 「二つのタブ」 で同時に開き、一方のタブを 「注記の表示専用」 にすると、非常に便利です。


(注1)
客室内など機内の 「与圧、および、空調」 は、ジェット・エンジンの内部で得られる高圧空気(燃焼させる前の空気)の一部を取り出して、「所定の気圧や温度に調整」 して、行っています。

そのため、エンジンに不具合が生じると、そこで発生した 「煙など」 が、客室内に流入する故障が生じることがあります。

それが、時々、マスコミでも報じられます。

ボーイング747型、実機の操縦席写真

(図1) ボーイング747型、実機の操縦席写真
(出典: 『ザ・コクピット 2003年1月1日発行』(イカロス出版)を引用、追記)

※※ 当記事の各図は 「拡大図付き」 です。マウスの左クリックで、「拡大図、元の図」 に切り替えられます。

※※ 図を参照しながら、本文をご覧になる場合、当記事を 「二つのタブ」 で同時に開き、一方のタブを 「図の表示専用」 にすると、非常に便利です。


※ 「図1」 は、以下の記事で掲示した図を、再掲しています。

(既存の記事)
『「FS」ならば、「飛行機の操縦」が素人でも自由に出来ます(13)』
2017年07月29日
https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2017/07/29/8629975

「航空機関士」が、「図1」 の右側にある 「航空機関士席の計器盤」 を操作して、機内の 「与圧、空調」 を行います。



(注2)
「ATCトランスポンダー」 と、「スコーク7700」 については、お手数ですが、以下の記事を、ご参照下さい。

(既存の記事)
『JAL123-「スコーク77」に関する、大きな「虚論」(1/8)』
2015年12月10日
https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2015/12/10/7943988

「この記事に掲示した図」 を再掲したのが、下の 「図2、図3」 です。

全日空747型機-操縦室-ATCトランスポンダ制御器

(図2) 全日空ボーイング747型機 「ATCトランスポンダ制御器」
(出典: 『ザ・コクピット』2003年1月1日 イカロス出版)


ATCトランスポンダ制御器-パネル説明

(図3) ATCトランスポンダ制御器の説明
(出典: 『航空工学講座・第10巻 航空電子・電気装備』(日本航空技術協会)を引用、追記)

※ 「図3」 は、古い機種の説明図です。「図2」 に対応しているかどうか不明です。

ボーイング747型機の 「ATCトランスポンダ制御器」(右側から見る)

(図4) ボーイング747型機の 「ATCトランスポンダ制御器」(右側から見る)
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)

※ 「図4」 は、以下の記事で紹介した、「日本航空のボーイング747型機フライト・シミュレータ装置(展示品)」 を撮影した写真です。
(「図5」 以下、関係する各図も同様)。

(既存の記事)
『「FS」ならば、「飛行機の操縦」が素人でも自由に出来ます(11)』
2017年07月22日
https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2017/07/22/8625526


ボーイング747型機の 「ATCトランスポンダ制御器」(正面・斜め上側から見る)

(図5) ボーイング747型機の 「ATCトランスポンダ制御器」(正面・斜め上側から見る)
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)


ボーイング747-200型機の 「ATCトランスポンダ制御器」

(図6) ボーイング747-200型機の 「ATCトランスポンダ制御器」
(出典: 日本航空作成の乗員訓練用 「紙レーター」 を、写真撮影、抜き出し追記)

※ 「図6」 は、下記 「図7」 で、「ATCトランスポンダ制御器」 部分だけを抜き出したものです。

ボーイング747-200型機の「乗員訓練用 『紙レーター』 」

(図7) ボーイング747-200型機の「乗員訓練用 『紙レーター』 」
(出典: 日本航空作成の乗員訓練用 「紙レーター」 を、写真撮影して追記)

※ 「図7」 は、本物の乗員訓練用に用いる、俗称 「紙レーター」 です。
「紙製のフライト・シミュレータ」 という意味です。

「計器や表示灯、スイッチ、レバーなどの位置」 を覚えるための、大事な教材です。
毎日の操縦訓練での、予習や復習などにも使います。

これ以外にも2枚あり、合計3枚一組です。
(機長・副操縦士席の計器盤2枚。航空機関士席の計器盤1枚)。

この「図7」 は、機長・副操縦士席用の 「2枚目」 です。

用紙サイズは、各図とも 「A1判」 です(新聞「見開き2ページ」 より少し大きめ)。



(注3)
「アイドル」 とは、自動車のアイドリングと同じです。

エンジンの出力(回転数)を、最小限に絞る状態を指します。

当然ながら、機体を浮かせる力はありません。

機体は、ドンドン降下して行きます。

一番、急降下しやすくなります。

ただし、エンジンを停止したら、与圧、油圧、電力なども、すべて停止するので、どれほど急降下する場合でも、エンジンを停止するわけにはいきません。

ボーイング747型機の 「パワー・レバー」

(図8) ボーイング747型機の 「パワー・レバー」
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)

「図8」 で、エンジンが4発あるので、エンジン出力操作用パワー・レバーの 「握り」 部分にも、それに対応する  「1~4」 の番号が付いています。

パイロットから見て、一番左側(左主翼側)が 「第1エンジン」、一番右側(右主翼側)が 「第4エンジン」 です。

1本のレバーに、「握り」 が各2個付いています。
「上側の握り」 をパイロットが握ります。
「下側の握り」 は、航空機関士が、パイロットを補佐するために握ります。
離陸時などは、パイロットと航空機関士が、同時に握ります。
(もちろん、パイロットが、操作の主導権を持ちます)。
(ただし、「ボーイング747型機」 以外のすべて(?)の機種は、「握り」 が各1個だけです)。
(特に、現代の機種は、航空機関士が乗務していないので、各1個しか 「握り」 がないのが当然です)。

「パワー・レバー」 を一番手前に引くと、エンジンが 「アイドリング状態」 になります。
「前方(機首側)」 一杯に押すと、「最大出力状態」 になります。

言うまでもなく、「パワー・レバー」 は、機長と副操縦士との間にあるので、両者どちらでも自由に操作できます。

通常は、4本のレバーを片手で一緒に握り、4本を同時に操作します。

この 「パワー・レバー」 左後方に、4個一組で、縦に3列、並んで見えるのが 「エンジン計器」 です。

なお、「図8」 では見えませんが、4本の 「パワー・レバー」 の背後に、それぞれ 「逆噴射レバー(リバース・レバー)」 があります。
(「パワー・レバー」 と一体化しているので、「パワー・レバー」 と一緒に前後に動きます)。

機体が接地後、着陸滑走中に、この 「逆噴射レバー」 を引き起こし、エンジンの逆噴射を行い、機体を減速させます。
(この時、エンジン音が、大きくなります)。



(注4)
「スピードブレーキ」 は、操作レバーが、機長席のすぐ右脇にあります。

このレバーを、手前に引き起こすと、動作します。

お手数ですが、以下の記事を、ご参照下さい。

この文中で、「(図1)ボーイング737-800シミュレータ操縦室正面の写真」 の部分で述べています。
(ただし、機種は、ボーイング747型機ではなく、ボーイング737型機です)。

(既存の記事)
『「FS」ならば、「飛行機の操縦」が素人でも自由に出来ます(4)』
2016年09月15日
https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2016/09/15/8190590


ボーイング747型機の 「スピード・ブレーキ・レバー」

(図9) ボーイング747型機の 「スピード・ブレーキ・レバー」
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)

「図9」 で、「パワー・レバー」 のすぐ左側にあるのが、「スピード・ブレーキ・レバー」 です。

「このレバー」 を手前に引くと、主翼上面にある 「スポイラー」(横長の板)が立ち上がり、気流を妨げ、機体を浮かせる 「揚力」 が減少するので、ブレーキの働きをします。



(注5)
「ATC機関」 とは、「航空管制機関」 の全体を指す表現です。

「東京航空交通管制部」 に限りません。

この 「全日空の操縦マニュアル」 では、ATCとして 「東京航空交通管制部」 を通信相手として想定しているので、このような注記を入れたものと思います。



(注6)
「副操縦士」 の発言で、「東京航空交通管制部」 の言い回しは、実情に合いません。

「東京コントロール」 という表現を用いるのが、「航空管制の無線通信」 としては、本来のやり方です(これより後で、この表現が出てきます)。

航空管制に限らず、無線通信では、「自分を表す名称(呼出符号、または、呼出名称 = コール・サイン)」 が、電波法に基づき、「無線局の免許状」 で、規定されています。

「相手」 を呼び出す時は、相手側の 「無線局の免許状」 に規定されている、「相手側のコール・サイン」 を用いて、呼び出します。

「無線局の免許状」 には、それぞれ、「自分側のコール・サインだけ」 が、規定(記載)されています。

「自分側」 の免許状に、「相手側のコール・サイン」 までは、規定(記載)されていません。

「自動車に例える」 ならば、「自分の車」 には、「自分のナンバープレートしか」 付いていません。
「他車のナンバープレート」 までもが、付いているはずがありません。
それと、同じです。

「注6」 の2行目にある、「東京コントロール」 が、この場合では 「相手側のコール・サイン」 です。



(注7)
「ジェット・エンジン」 の場合、エンジンが始動し、安定すれば、点火栓の動作は停止します。

エンジンの燃焼室内で、燃料が燃焼しているので、その後から注入される燃料も、自動的に発火燃焼します。

そのため、点火栓を常時動作させる必要がありません。

一方、飛行中に、気象状況の影響で燃焼の炎が消えてしまうなど、何らかの可能性があれば、意識的に点火栓を動作させます。

ピストン・エンジンでは、自動車と同様、常に点火栓を動作させます。

どちらのエンジンでも、航空機の場合、点火栓は2系統あり、安全性を高めています。

ボーイング747-200型機の乗員訓練用 「紙レーター」で、「頭上パネル」部分

(図10) ボーイング747-200型機の乗員訓練用 「紙レーター」で、「頭上パネル」部分
(出典: 日本航空作成の乗員訓練用 「紙レーター」 を、写真撮影、抜き出し追記)

※ 「図10」 は、前掲した、乗員訓練用 「紙レーター」 3枚組の1枚目で、「頭上パネル」(オーバーヘッド・パネル)部分を抜き出したものです。

ボーイング747型機の 「頭上パネル」

(図11) ボーイング747型機の 「頭上パネル」
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)

「図11」 が、シミュレータ装置での、「頭上パネル」 位置を示します。
(ガラスの反射で、見づらいです)。

ボーイング747型機の 「イグニッション・スイッチ1・2」

(図12) ボーイング747型機の 「イグニッション・スイッチ1・2」
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)

「図12」 は、第1・第2エンジンの 「点火栓スイッチ」(イグニッション・スイッチ)です。


ボーイング747型機の 「イグニッション・スイッチ3・4」

(図13) ボーイング747型機の 「イグニッション・スイッチ3・4」
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)

「図13」 は、第3・第4エンジンの 「点火栓スイッチ」(イグニッション・スイッチ)です。


ボーイング747型機の 「イグニッション・スイッチ(中央部)」

(図14) ボーイング747型機の 「イグニッション・スイッチ(中央部)」
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)

「図14」 は、4個の 「点火栓スイッチ」 全体を制御するためのスイッチと思いますが、良く分かりません。

なお、ジェット・エンジンの場合、2系統ある点火栓の内、1系統だけを用います。
(もう一方は、予備システムとして存在)。

ピストン・エンジンの場合は、常時2系統を同時に使用します。



(注8)
ここで言う 「客室高度」 は、客室内の 「与圧の強さ(気圧)」 のことです。

機体が実際に飛行している場所(高さ)を表す、「飛行高度」 とは意味が異なります。

パイロットにとっては、「気圧そのもの」 で表現するよりも、「その気圧に相当する高度」 で表現したほうが、操縦する上で実用的なので、「気圧ではなく高度」 で表現しています。

「1万3000フィートを超えていれば」 とは、客室内が、この高度よりも 「高い高度にある」 ことを、意味します。

つまり、「与圧の気圧としては、必要な気圧よりも低い」 ことを意味します。

そのため、酸素マスクが、自動的に落ちてきます。

(機体外側の 「大気」 においては、「高度が高いほど、気圧が低い」 のは、言うまでもありません)。

◎ 気圧の単位は、「psi(ポンド・パー・スクエア・インチ)」 です。

1psi ならば、1平方インチ当たり、1ポンドの圧力となります。

1psi = 0.07307kg/cm2

ボーイング747-200型機の乗員訓練用 「紙レーター」で、「航空機関士の計器盤(全体図)」

(図15) ボーイング747-200型機の乗員訓練用 「紙レーター」で、「航空機関士の計器盤(全体図)」
(出典: 日本航空作成の乗員訓練用 「紙レーター」 を、写真撮影して追記)


ボーイング747-200型機の乗員訓練用 「紙レーター」 で、「客室与圧パネル」部分

(図16) ボーイング747-200型機の乗員訓練用 「紙レーター」 で、「客室与圧パネル」部分
(出典: 日本航空作成の乗員訓練用 「紙レーター」 を、写真撮影、抜き出し追記)

ボーイング747-200B型機の「客室与圧パネル」

(図17) ボーイング747-200B型機の 「客室与圧パネル」
(出典: 清水保俊『ラスト・フライト ジャンボ機-JA8165号機の場合』(講談社)の写真・解説文を引用、追記)

「図17」 で、「客室高度の設定ツマミ」 を回して、所定の与圧を行います。

「キャビン高度計」 が指示する高度が、この「注8」 で言う 「客室高度」 です。

客室内だけではなく、操縦室の与圧も、これで制御します。



(注9)
日本語としては、「チェックリストを実施する」 との表現は、いささか不自然とも言えます。

「チェックリストの、『いったい何を』 実施するのだ?」と、ツッコミを入れたくなります(笑)。

しかし、航空界では、この表現を用います。

ひょっとすると「英語の直訳」 かもしれません。



(注10)
「車輪を降ろせば」 空気抵抗が増えるので、機体は、より一層降下します。

そのため、緊急時でなくても、着陸進入中などに、飛行速度を抑えるために、意識的に車輪を降ろす場合もあります。

ただし、「車輪を降ろせる最大限度の飛行速度」 が、機種ごとに決まっています(車輪の破損を防ぐため)。

ボーイング747型機の 「車輪レバー」

(図18) ボーイング747型機の 「車輪レバー
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)

「車輪レバー」 は、基本的には、機長の指示を受けて、副操縦士が操作します。

ボーイング747型機の 「車輪レバー(拡大写真)」

(図19) ボーイング747型機の 「車輪レバー(拡大写真)」
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)

「図19」 では分かりづらいですが、レバーの腕部分は、「それなりの長さ」 があります。

飛行中、「レバー」 は、中央の 「OFF」 位置にあります。

「脚下げ時」 には、「レバー」 をいったん手前に引いてから、下の 「DN」 位置に下げます。

レバーの 「握り」 部分は、「タイヤの形」 にしてあり、「車輪レバー」 だと確実に分かるようにしてあります。

かつて、「フラップ(下げ翼)・レバー」 と、「車輪レバー」 を間違えて操作した事故があり、このような造りになりました。

着陸脚が正常に出ると、「緑灯」 が点灯します。

脚出し操作中は、「赤灯」 が点灯するものと思います。

なお、「フラップ・レバー」 は、下の 「図20」 です。

ボーイング747型機の 「フラップ・レバー」

(図20) ボーイング747型機の 「フラップ・レバー」
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)

「フラップ・レバー」 の握り部分は、いかにも、「フラップ(下げ翼)」 のイメージそのものです。

これも、「車輪レバー」 と間違えるのを防ぐためです。



(注11)
「バンク角」 とは、機体の 「左右方向の傾き」 を表す角度のことです。

以下の記事で、「(図10)最も重要な計器写真の説明」 の部分で、多少述べています。

(ただし、この記事では、「バンク角」 の表現は、意識的に行っていません)。

(既存の記事)
『「FS」ならば、「飛行機の操縦」が素人でも自由に出来ます(4)』
2016年09月15日
https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2016/09/15/8190590


「バンク角」 の説明図

(図21) 「バンク角」 の説明図
(出典: 『航空工学講座・第1巻 航空力学』(日本航空技術協会)を引用、編集)

「バンク角」 とは、「図21」 の通り、「水平線と機体の傾き(左右方向)」 とのなす角度です。



(注12)
緊急降下から、水平飛行に戻した後にも、「急減圧・緊急降下チェックリスト」 で点検する必要があるので、その点検項目は、「緊急降下中には、点検せず保留」 にしてあります。

水平飛行に戻ったので、「保留した、残りの点検項目を点検しろ」 と機長が命じたわけです。



(注13)
航空機の高度計は、「気圧高度計」 と、「電波高度計」  の2種類あります。

通常は、「気圧高度計」 を用います。
 
「高度に応じて、気圧が変化する」 大気の性質を利用して、「気圧の変化に対応する高度に換算」 して、目盛りを振ってあります。

この「目盛りを、針が指し示して」、高度を 「フィート(単位)」 で表示します。

ところが、気象の変化により、同じ地点でも、気圧が変化します。

そのままでは、勝手に高度の指示が、変化してしまいます。

それを防ぐために、気象機関が、常時気圧を測定し、航空管制機関に伝えます。

その気圧値を、無線でパイロットに知らせます。

パイロットは、それを受けて、「気圧高度計」 のツマミを回して、現在の気圧値に合わせ、高度計の指示を補正します。

そのため、「気圧高度計」 には、「気圧数値を表示するための、小さな窓」 が設けてあります。

ただし、現代の 「デジタル式計器」 では、もっと 「堂々とした表示方式」 になっています(笑)。

◎ 「電波高度計」  は、「着陸時だけ」に使います。

小型機などは、費用がかかるので、「電波高度計」 までは装備していません。

ボーイング747型機の 「高度計(2種類)」

(図22) ボーイング747型機の 「高度計(2種類)」
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)

前述した、「気圧数値を表示するための、小さな窓」 が、この 「図22」 で示す 「気圧表示窓」 です。

「ミリバールと、インチHg」 の2種類を同時に表示しています。

上側の窓が 「ミリバール」 で、下側が 「インチHg」 です。

標準的な気圧 「1013ヘクトパスカル(ミリバール)」 に対応するのが、「29.92インチHg」 です。

日本や米国の航空界では、「インチHg」 を用います。

この気圧を 「補正するためのツマミ」 が、下記の 「図23」 です。

なお、上の 「図22」 では、「高度1,000フィート」 を指示しています。

指針が、「100フィートと、10フィートの桁」 を指示します。
(この指針は、時計の針と同様に、何回転もします)。

さらに、「100フィート以上の桁」 を、「機械式のデジタル数字」 で表示します。

ここでは 「1万フィート」 の数値(桁)は存在しないので、それを表す 「縞模様の警告フラッグ」 が出ています。

ボーイング747型機の 「高度計の気圧補正ツマミ」

(図23) ボーイング747型機の 「高度計の気圧補正ツマミ」
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)

※ 「図23」 は、副操縦士席の高度計です。
(「図22」 は、機長席側です)。

このツマミを回すと、上記の気圧表示窓の数字が変化します。

それと同時に、高度計の指示も変化して行きます。

なお、この 「注13」 で以下の通り、前述しました。

「ところが、気象の変化により、同じ地点でも、気圧が変化します。」

一方、異なった地点、例えば 「出発地と到着地」 などは、当然気圧が異なります。

この場合も、それぞれの地点で、気圧補正が必要です。

◎ 「高度計の補正」 は、正しくは 「高度計の規正」 と言います。



(注14)
乗客用の酸素マスクと、運航乗員用の酸素マスクとは、システムがまったく別系統になっています。

そのため、「純酸素」 から、「空気と酸素の混合供給に切り替える」 操作を行うようです。

(素人なので、この点は、良く分かりません)。

ボーイング747型機の 「機長席の酸素マスク」

(図24) ボーイング747型機の 「機長席の酸素マスク」
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)

※ 「図24」 は、ガラスの反射で、見づらくなっています。

「運航乗員用の酸素マスク」 は、鼻と口に当てるだけではなく、体を動かしても外れないように、頭から 「すっぽりかぶる」 構造になっています。

「通話や無線通信に用いるマイク」 が組み込んであります。

ボーイング747型機の 「副操縦士席の酸素マスク」

(図25) ボーイング747型機の 「副操縦士席の酸素マスク」
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)


「図24、図25」 いずれも、酸素マスクを 「つり下げている位置」 が、不自然な気がします。

実際の収納場所は、もっと 「じゃまにならない位置」 にあるはずです。

ボーイング747型機の 「機長席側の酸素マスク制御パネル」

(図26) ボーイング747型機の 「機長席側の酸素マスク制御パネル」
(出典: 自分で撮影。日本航空のフライト・シミュレータ展示品)

前述の、「純酸素」 から、「空気と酸素の混合供給に切り替える」 操作は、この 「制御パネル」 で行うものと思います。



(注15)
「注8」 で述べたように、「機体の飛行高度と、客室高度」 は、意味が異なります。

ここでは、「機体の飛行高度が、1万3000フィートまで低下したにも関わらず、客室高度は、それよりも高い高度に陥ったまま(気圧が低いまま、回復しない)」 ということになります。

そのため、さらに、機体を1万フィートまで低下させて、「客室の気圧を、与圧で高めるのではなく、自然に高める」 判断を下しました。



(注16)
実際には、副操縦士が、「そちらと操縦を交代する」 と返答するはずです。

機長が 「自分で操縦する」 と言明したにも関わらず、副操縦士が、それに応じて返答しないと、厳密に言えば、「操縦の主導権を、誰が握っているのか」 分からなくなります。

これは、非常に危険です。

下手をすると、「お互いに、『自分が主導権を握っている』 との誤解に陥る」 危険性があります。

「操縦主導権」 の受け渡しは、「必ず、お互いに明確に行う」 必要があります。

この時、用いる言葉は、次の2種類と明確に決まっています。

◎ 相手に主導権を委ねる時 → 「ユー・ハブ(ユー・ハブ・コントロール)」
◎ 自分が主導権を持つ時 → 「アイ・ハブ(アイ・ハブ・コントロール)」

-----------------------------------

この 「引用D-1(引用D)」 と、「CVR記録」 との関係について、次回(第5回目)の記事で、具体的に述べる予定です。

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以下、長文のため、第5回目に続きます。

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JAL123-事故調査報告書「ボイス・レコーダ記録」を見ると、「急減圧流は存在しない」と解釈できる(3)2017年12月23日

[カテゴリ: JAL123便>CVR記録]

第2回目の記事から続きます。
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前回(第2回目)の記事で、以下の問題について述べました。

(問題点B) 客室乗務員は、「急減圧が生じたとは、一言も発言していない」 と、思えてならない。

今回(第3回目)も、引き続き、この問題点に関して述べます。

----------

日本航空ではなく、全日空ですが、「急減圧が生じた時の、典型的な対処方法」 について、以下の図書に明示してあります。

米田憲司 ・ 著 『御巣鷹の謎を追う 日航123便事故20年』 (宝島社)

「典型的な急減圧発生時の操縦マニュアルである」 と、同書142ページで述べています。

この時に行うべき「操縦マニュアル」 を、著者が、説明のために記述(引用)しています。

同書では明示していませんが、内容からすると、「ボーイング747型機の操縦マニュアル」のはずと思います。

かなり長文ですが、急減圧が発生した時、「運航乗員たちが、何をどのように行う」のか、非常に分かりやすいので、以下、引用します。

※ 「印刷物である、同書の誌面レイアウト」 を、そのまま、当ブログ画面上で用いると、かえって分かりづらくなるので、少し変更しています。
※ 引用文中で、<説明文> の表示は、原文にはありません。
※ 原文では、「説明文」 に相当する部分全体を 「かぎかっこ」 で囲む表現をしています。
※ <著者の発言文>  の表示も、原文にはありません。

※ 必要に応じて、「原文にない改行」 を加えています。

(引用D)(上記の同書139~142ページ)
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■ 全日空の急減圧発生訓練

どの航空会社でも、運航乗員は片方のエンジンがトラブルを起こしてストップしたときの対応や機体が損傷して機内の空気が一気に外に吐き出されることによって起きる急減圧の対応訓練をシミュレーター(模擬飛行装置)を使って行なっている。

(中略)

ここでは、全日空の運航乗員に急減圧に対処する典型的な訓練の方法を聞いたので紹介したい。


★何かの原因で急減圧が発生したと想定。

機長   「どうした 何が起こった」
副操縦士 「ラピッド デコンプレッション」(急減圧だ)
機長   「マスク オン」(酸素マスクをつけろ)

<説明文>
この間、航空機関士は数秒で空気漏れが原因となった減圧を想定して、四基のエンジンから抽出される空気(注1)を共通ダクトに集め、共通ダクトに二個装備されている分離弁の一方を閉じる。

そうすることによって、分離弁より下流に空気漏れがあった場合は正常なダクトが空気を供給するので、減圧を停止することができる。

また、三個装備されている与圧装置すべてを作動させることによって、減圧の程度を緩和する場合もある

航空機関士はこれらの操作をしても減圧が回復できないときは、機長に報告する。

(注1)客室内など機内の「与圧、および、空調」は、ジェット・エンジンの内部で得られる高圧空気(燃焼させる前の空気)の一部を取り出して、「所定の気圧や温度に調整」 して、行っています。
そのため、エンジンに不具合が生じると、そこで発生した 「煙など」 が、客室内に流入する故障が生じることがあります。
それが、時々、マスコミでも報じられます。


機長 「OK。緊急降下実施。1万3000フィートまで降下する。ATCトランスポンダーを7700(緊急事態発生コード番号)にセットせよ(注2)

(注2)「ATCトランスポンダー」 と、「スコーク7700」 については、お手数ですが、以下の記事を、ご参照下さい。

(既存の記事)
『JAL123-「スコーク77」に関する、大きな「虚論」(1/8)』
2015年12月10日
https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2015/12/10/7943988


<説明文>
機長はオートスロットル=自動推力装置を外し、エンジンをアイドル(注3)にし、スピードブレーキ(注4)を開いて交差する航空機と衝突の可能性の少ないほうへ変針し、急降下を開始する。

副操縦士は安全ベルト着用サインを点灯させ、ATCトランスポンダーを7700にセットし、ATC〈東京航空交通管制部〉機関(注5)に緊急降下を通告する。

(注3)「アイドル」 とは、自動車のアイドリングと同じです。
エンジンの出力(回転数)を、最小限に絞る状態を指します。
当然ながら、機体を浮かせる力はありません。
機体は、ドンドン降下して行きます。
一番、急降下しやすくなります。
ただし、エンジンを停止したら、与圧、油圧、電力なども、すべて停止するので、どれほど急降下する場合でも、エンジンを停止するわけには行きません。

(注4)「スピードブレーキ」 は、操作レバーが、機長席のすぐ右脇にあります。
このレバーを、手前に引き起こすと、動作します。
お手数ですが、以下の記事を、ご参照下さい。
この文中で、「(図1)ボーイング737-800シミュレータ操縦室正面の写真」 の部分で述べています。
(ただし、機種は、ボーイング747型機ではなく、ボーイング737型機です)。

(既存の記事)
『「FS」ならば、「飛行機の操縦」が素人でも自由に出来ます(4)』
2016年09月15日
https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2016/09/15/8190590

(注5)「ATC機関」 とは、「航空管制機関」の全体を指す表現です。
「東京航空交通管制部」 に限りません。
この 「全日空の操縦マニュアル」 では、ATCとして「東京航空交通管制部」 を通信相手として想定しているので、このような注記を入れたものと思います。


副操縦士 「東京航空交通管制部(注6)、こちら全日空000便。急減圧発生。緊急降下を開始した。1万3000フィー卜まで降下する」
ATC  「了解。全日空000便、緊急降下を承認する。1万3000フィー卜まで降下せよ。到達したら一報せよ」

(注6)「副操縦士」 の発言で、「東京航空交通管制部」 の言い回しは、実情に合いません。
「東京コントロール」 という表現を用いるのが、「航空管制の無線通信」 としては、本来のやり方です(これより後で、この表現が出てきます)。
航空管制に限らず、無線通信では、「相手や自分を表す名称(呼出符号、または、呼出名称 = コール・サイン)」 が、電波法に基づき、「無線局の免許状」 で、規定されています。
=============================================================
<修正>

上記、「注6」 の最終行は、「あいまいで、非常に紛らわしい表現」 です。

申し訳ありません。

以下の通り、「修正」 します。

(1)最終行で、「…… 相手や ……」 の部分を削除します。

(2)そのため、上記の最終行を、次のように変更します。

航空管制に限らず、無線通信では、「自分を表す名称(呼出符号、または、呼出名称 = コール・サイン)」 が、電波法に基づき、「無線局の免許状」 で、規定されています。

(3)さらに、以下の 「説明文」 を、この 「最終行の後」 に追加します。

「相手」 を呼び出す時は、相手側の 「無線局の免許状」 に規定されている、「相手側のコール・サイン」 を用いて、呼び出します。

「無線局の免許状」 には、それぞれ、「自分側のコール・サインだけ」 が、規定(記載)されています。

「自分側」 の免許状に、「相手側のコール・サイン」 までは、規定(記載)されていません。

「自動車に例える」 ならば、「自分の車」 には、「自分のナンバープレートしか」 付いていません。
「他車のナンバープレート」 までもが、付いているはずがありません。
それと、同じです。

「注6」 の2行目にある、「東京コントロール」 が、この場合では 「相手側のコール・サイン」 です。

<この項追加。H30 / 2018-1-6>
=============================================================



<説明文>
この間、航空機関士は十五秒から二〇秒以内に最低回転数に絞ったエンジンが停止しないように点火装置のスイッチをオンにしておく(注7)

(注7)「ジェット・エンジン」 の場合、エンジンが始動し、安定すれば、点火栓の動作は停止します。
エンジンの燃焼室内で、燃料が燃焼しているので、その後から注入される燃料も、自動的に発火燃焼します。
そのため、点火栓を常時動作させる必要がありません。
一方、飛行中に、気象状況の影響で燃焼の炎が消えてしまうなど、何らかの可能性があれば、意識的に点火栓を動作させます。
ピストン・エンジンでは、自動車と同様、常に点火栓を動作させます。
どちらのエンジンでも、航空機の場合、点火栓は2系統あり、安全性を高めています。


また、客室高度を確認し、1万3000フィートを超えていれば(注8)乗客用酸素マスクが自動的にドロップしていることを確認する。

作動していなければ、スイッチを操作してマスクをドロップさせる。

(注8)ここで言う「客室高度」 は、客室内の 「与圧の強さ(気圧)」 のことです。
機体が実際に飛行している場所(高さ)を表す、「飛行高度」 とは意味が異なります。
パイロットにとっては、「気圧そのもの」 で表現するよりも、「その気圧に相当する高度」 で表現したほうが、操縦する上で実用的なので、「気圧ではなく高度」 で表現しています。
「1万3000フィートを超えていれば」 とは、客室内が、この高度よりも 「高い高度にある」 ことを、意味します。
つまり、「与圧の気圧としては、必要な気圧よりも低い」 ことを意味します。
そのため、酸素マスクが、自動的に落ちてきます。
(機体外側の「大気」 においては、「高度が高いほど、気圧が低い」 のは、言うまでもありません)。
◎ 気圧の単位は、「psi(ポンド・パー・スクエア・インチ)」 です。
1psi ならば、1平方インチ当たり、1ポンドの圧力となります。
1psi = 0.07307kg/cm2


機長  「航空機関士は急減圧・緊急降下のチェックリストを実施せよ」(注9)
機関士 「了解」

<説明文>
航空機関士は該当するチェックリストに従って無言でチェックする。

無言のチェックは極めて緊急性を要求する事態であるため、パイロットには機の操縦に専念させ、余計な負担をかけさせないためである。

(注9)日本語としては、「チェックリストを実施する」 との表現は、いささか不自然とも言えます。
しかし、航空界では、この表現を用います。
「英語の直訳」 かもしれません。


機長  「状況を点検して知らせよ」
機関士 「依然として機内与圧はコントロールできない。機体に損傷はない」もしくは「機体に重大な損傷がある」

<説明文>
機長は機体に損傷がなければ車輪を降ろして降下率を深める操作を、機体に重大な損傷があれば、車輪は格納したまま、あまり深すぎない降下率で急降下する。(注10)

(注10)「車輪を降ろせば」 空気抵抗が増えるので、機体は、より一層降下します。
そのため、緊急時でなくても、着陸進入中などに、飛行速度を抑えるために、意識的に車輪を降ろす場合もあります。
ただし、「車輪を降ろせる最大限度の飛行速度」が、機種ごとに決まっています(車輪の破損を防ぐため)。


航空機関士は機長の指示に従って、操作に手抜かりがないかを確認していく。

これは緊急降下開始後から操作してきた共通ダクトの分離弁の閉鎖、すべての与圧装置の作動、安全ベルト着用サインの点灯、酸素マスクの作動、エンジン点火装置の作動スイッチオン、車輪の状態確認、自動操縦装置の使用有無、速度が限界を超えていないか、スコーク7700のセット、バンク角が45度を超えていないこと(注11)などを再確認する。

(注11)「バンク角」 とは、機体の 「左右方向の傾き」 を表す角度のことです。
以下の記事で、「(図10)最も重要な計器写真の説明」 の部分で、多少述べています。
(ただし、この記事では、「バンク角」の表現は、意識的に行っていません)。

(既存の記事)
『「FS」ならば、「飛行機の操縦」が素人でも自由に出来ます(4)』
2016年09月15日
https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2016/09/15/8190590


機関士 「確認終了」
機長  「了解」

<説明文>
機体が1万3000フィートまで、あと2000フィートに近づいたとき。


副操縦士  「目標高度の2000フィート手前」
副操縦士  「目標高度の1000フィート手前」

<説明文>
機長は目標高度で巡航に切り替えるためにスピードブレーキを元に戻し、降下率を緩和し始め、適当な時期にパワーをアップし、他の乗員に速度、出力を提示する。

機体が水平飛行に移行した段階になると。


機長 「チェックリストの残りを実施せよ」(注12)

(注12)緊急降下から、水平飛行に戻した後にも、「急減圧・緊急降下チェックリスト」 で点検する必要があるので、その点検項目は、「緊急降下中には、点検せず保留」 にしてあります。
水平飛行に戻ったので、「保留した、残りの点検項目を点検しろ」 と機長が命じたわけです。


<説明文>
航空機関士はスピードブレーキがダウン位置に格納されていることの確認、車輪引き上げの確認、高度計の気圧補正=飛行中の地域の気圧による高度計の補正(注13)=を行う。

乗員酸素供給システムを純酸素から空気と酸素の混合供給に切り替える(注14)などを確認し、報告する。

(注13)航空機の高度計は、「気圧高度計」 と、「電波高度計」  の2種類あります。
通常は、「気圧高度計」 を用います。
「高度に応じて、気圧が変化する」 大気の性質を利用して、「気圧の変化に対応する高度に換算」 して、目盛りを振ってあります。
この「目盛りを、針が指し示して」、高度を 「フィート(単位)」 で表示します。
ところが、気象の変化により、同じ地点でも、気圧が変化します。
そのままでは、勝手に高度の指示が、変化してしまいます。
それを防ぐために、気象機関が、常時気圧を測定し、航空管制機関に伝えます。
その気圧値を、無線でパイロットに知らせます。
パイロットは、それを受けて、「気圧高度計」 のツマミを回して、現在の気圧値に合わせ、高度計の指示を補正します。
そのため、「気圧高度計」 には、「気圧数値を表示するための、小さな窓」 が設けてあります。
ただし、現代の 「デジタル式計器」 では、もっと 「堂々とした表示方式」 になっています(笑)。
◎ 「電波高度計」  は、「着陸時だけ」に使います。
小型機などは、費用がかかるので、「電波高度計」 までは装備していません。

(注14)乗客用の酸素マスクと、運航乗員用の酸素マスクとは、システムがまったく別系統になっています。
そのため、「純酸素」 から、「空気と酸素の混合供給に切り替える」 操作を行うようです。
(素人なので、この点は、良く分かりません)。


機長 「状況を知らせよ」

<説明文>
機体が1万3000フィートまで下りていても、客室高度はまだ酸素マスクがドロップする高さであるため、さらに安全な一万フィートまで降下することになる(注15)

(注15)「注8」 で述べたように、「機体の飛行高度と、客室高度」 は、意味が異なります。
ここでは、「機体の飛行高度が、1万3000フィートまで低下したにも関わらず、客室高度は、それよりも高い高度に陥ったまま(気圧が低いまま、回復しない)」 ということになります。
そのため、さらに、機体を1万フィートまで低下させて、「客室の気圧を、与圧で高めるのではなく、自然に高める」 判断を下しました。


機関士  「客室高度1万3000フィートのまま」
機長   「了解、1万フィートに降下する」
副操縦士 「束京コントロール、全日空000便、1万フィートまでの降下を要求する。依然として与圧装置をコントロールできない」
ATC  「全日空000便、許可する。降下し、1万フィートを維持せよ」
機長   「1万フィートに到達したら客室に酸素マスクを外してよいと連絡を。乗客の状態、客室の様子を聞いてくれ」


<説明文>
副操縦士または航空機関士は、インターホンを使って客室乗務員に酸素マスクを外しても支障のない旨を伝え、客室の状況を確認。機長に報告する。


機長 「オキシジェンマスク オフ」(運航乗員の酸素マスクを外してもよろしい)

<説明文>
まず、副操縦士と航空機関士がマスクを外し、その間は機長が単独で機の操縦を行なう。

副操縦士と航空機関士がマスクを格納したらその旨をコールする。

そのコールを確認して機長は操縦を一時、交替することを指示。


機長   「操縦を交替せよ」
副操縦士 「こちらが操縦を引き受けた」

<説明文>
機長は自分のマスクを外して格納する。


機長 「操縦を代わる」(注16)

(注16)実際には、副操縦士が、「そちらと操縦を交代する」 と返答するはずです。
機長が 「自分で操縦する」 と言明したにも関わらず、副操縦士が、それに応じて返答しないと、厳密に言えば、「操縦の主導権を、誰が握っているのか」 分からなくなります。
これは、非常に危険です。
下手をすると、「お互いに、『自分が主導権を握っている』 との誤解に陥る」 危険性があります。
「操縦主導権」 の受け渡しは、「必ず、お互いに明確に行う」 必要があります。
この時、用いる言葉は、次の2種類と明確に決まっています。
◎ 相手に主導権を委ねる時 → 「ユー・ハブ(ユー・ハブ・コントロール)」
◎ 自分が主導権を持つ時 → 「アイ・ハブ(アイ・ハブ・コントロール)」


<説明文>
これ以降は「緊急事態」を脱出できたので相談しながらその後のフライトについて打ち合わせる。


<著者の発言文>
典型的な急減圧発生時の操縦マニュアルである。

123便のボイスレコーダーの会話と比較すると、まったく急減圧が起きている事態とはかけ離れていることがよく分かる。
-----------------------------------------------------------------------------
(引用D、以上)


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この「引用D」 については、次回(第4回目)、具体的に述べます。

-----------------------------------

以下、長文のため、第4回目に続きます。

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JAL123-事故調査報告書「ボイス・レコーダ記録」を見ると、「急減圧流は存在しない」と解釈できる(2)2017年12月02日

[カテゴリ: JAL123便>CVR記録]

第1回目の記事から続きます。
https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2017/11/22/8732511

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日本航空123便の 『航空事故調査報告書』 で、第1回目の記事で述べた、『別添6 CVR記録』 317ページから320ページを、以下に掲示します。

「客室乗務員と、操縦室(航空機関士)との通話」 で、第2回目のものです。

(317ページは、「第1回目の記事」 で、「図2」 と同じです)。
(図番は、「第1回目の記事」 から引き続きます)。

CVR記録317ページ

(図3) CVR記録317ページ(拡大図付)
(出典:『航空事故調査報告書』 第1分冊を引用、追記)

※※ 当記事の図は 「拡大図付き」 です。マウスの左クリックで、「拡大図、元の図」 に切り替えられます。

※※ 図を参照しながら、本文をご覧になる場合、当記事を 「二つのタブ」 で同時に開き、一方のタブを 「図の表示専用」 にすると、非常に便利です。


(F/E) 航空機関士(フライト・エンジニア)

「図3」 で、「赤色の枠」 部分は、「航空機関士が、客室乗務員に対して通話(発言)している」 部分です。

「緑色の枠」 部分は、「航空機関士が、客室乗務員に対して話したのか、それとも操縦室内(機長・副操縦士)に向かって話したのか」、判然としません。
(そのため、「赤枠」 とは異なる、「緑色の枠」 で表示しました)。
(この件は、後述します)。


CVR記録318ページ

(図4) CVR記録318ページ(拡大図付)
(出典:『航空事故調査報告書』 第1分冊を引用、追記)

(F/E) 航空機関士(フライト・エンジニア)
(COP) 副操縦士(コ・パイロット)

「図4」 で、「橙色の枠」 部分は、「航空機関士が、操縦室内(機長・副操縦士)に向かって」 話しています(あるいは、副操縦士に向かって話しています)。
その直後に、副操縦士(COP)が、「はい」 と返答しています。
(そのため、「赤枠」 とは異なる、「橙色の枠」 で表示しました)

(注)「図4」 で、「赤色枠」 内にある、「(CAP 機長)もってくれる」 は、「航空機関士と客室乗務員との通話」 とは、無関係のはずです。
おそらく、機長が、副操縦士に対して発言したものと思います。


CVR記録319ページ

(図5) CVR記録319ページ(拡大図付)
(出典:『航空事故調査報告書』 第1分冊を引用、追記)

(F/E) 航空機関士(フライト・エンジニア)

「図5」 で、「橙色の枠」 部分は、「航空機関士が、客室乗務員ではなく、操縦室内(機長・副操縦士)に向かって」 発言しています。
(そのため、「赤枠」 とは異なる、「橙色の枠」 で表示しました)

ただし、この 「CVR記録」 を見る限りでは、この枠内において、「機長・副操縦士」 いずれも、上記「航空機関士の発言」 に対して、返答していません。


CVR記録320ページ

(図6) CVR記録320ページ(拡大図付)
(出典:『航空事故調査報告書』 第1分冊を引用、追記)

(COP) 副操縦士(コ・パイロット)
(F/E) 航空機関士(フライト・エンジニア)
(CAP) 機長(キャプテン)

「図6」 で、「赤色枠」 部分は、「航空機関士が、客室乗務員に対して通話している」 部分です。

「第1番目の橙色枠」 部分は、副操縦士が、おそらく機長に向かって発言しているものと思います。
ただし、断言はできません。
ひょっとすると、航空機関士に対して、念を押すための発言かもしれません。
「CVR記録」では、誰の返答もないので、判然としません。
(「ディセント」 とは、機体を降下させることです)。

「第2番目の橙色枠」 部分は、航空機関士が、機長に呼びかけ、二人で会話を行っています。
さらに、副操縦士が、途中から加わっています。

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「客室乗務員」 が、操縦室を呼び出すと、操縦室で 「チャイム音」 が鳴ります。
これにより、「呼び出された」 と分かります。

「CVR記録」 で、「警報音等」 の項目中にある、「☆マーク」 がそれです。

(これについては、次回以降の記事(操縦室の音声システム)で述べます)。

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「317ページから320ページまで」 の内容を、以下、整理します。

(注)「事故調査報告書」 では、「判読不確実」 の部分に下線を引いてあります。
しかし、当ブログ(アサブロ)は、下線を引くのが(事実上)不可能なので、省略しています。
そのため、やむなく、判読不確実を無視して、「正しく判読できているものと見なして」、以下、述べます。

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■ 航空機関士(F/E)が、客室乗務員に対して行った通話(発言)

<18時30分28秒 ~ 40秒>

オキシジェンプレッシャー(注1)どうですか?

オキシジェンマスクおっこってますか?

あーそうですか
じゃー
オキシジェンプレッシャー
あー その
PO2ボトル(注2)ちゃんとつけてください

(注1)「オキシジェン」とは、「酸素」 のことです。
したがって、「オキシジェン プレッシャー」とは、酸素圧力と言えます。

その次に、「オキシジェン マスク おっこってますか?」 とあるので、ここでは、客席上部のパネルが開いて自動的に落下した、「酸素マスクの圧力が正常か、どうか(マスクから、正常に酸素が出ているか、どうか)」を、客室乗務員に質問しているのではないかと思います。

(注2)「PO2ボトル」 とは、客室乗務員が、必要に応じて、乗客や乗務員自身に対して用いる 「携帯用の酸素ボトル(ポータブル酸素ボトル)」 を指すと、言われています。
これは、「急減圧が生じた時だけ使う」 と決まっているわけではありません。
例えば、急病人が生じ、酸素吸入が必要な時など、さまざまな場合に用います。


<18時31分41秒 ~ 56秒>


はい なんですか?

後のほうですか?

え-と
なにがこわれているんですか?

どこですか?


<18時32分01秒 ~ 07秒>


荷物を収納するところですね?

うしろのほうの いちばんうしろの ほうですね? はいわかりました


<18時33分17秒 ~ 31秒>

ちゃんとオキシジェン調べてくれる?

アールファイブのは まだですか?    

はい了解しました

はい了解しました

はい了解しました


■ 航空機関士(F/E)が、機長(CAP)や副操縦士(COP)に対して行った発言(会話)


<18時30分55秒 >

(F/E)オキシジェンマスクがドロップしているから(注3)

(注3)これは、前述のように、誰に対する発言か、判然としません。

一方、そのすぐ後とも言える 「13秒後」 に、同じ発言を 「次項に示す通り」 航空機関士が行っています。

それに対して、副操縦士が、「はい」 と直ちに応えています。

したがって、上記、「30分55秒の発言」 は、客室乗務員に対してではなく、機長や副操縦士に向かって発言した可能性もあります。

ただし、この 「30分55秒発言」 の直後には、機長・副操縦士ともに応えていないので、断言はできません。


<18時31分08秒 ~ 09秒>

(F/E)オキシジェンマスクがドロップしてます
(COP)はい


<18時32分11秒 ~ 33秒>

(F/E)あのですね 荷物いれてある 荷物のですね いちばんうしろ ですね

   荷物の収納スペースのところが おっこってますね

   これは降りたほうが いいと思いますう

(F/E)マスクは一応みんな吸っておりますから


<18時33分17秒 ~ 57秒>

(F/E)キャプテン
(CAP)はい
(F/E)アールファイブの マスクがストップですから 
   ・・・
   エマージェンシーディセント(注4)やったほうが いいと思いますね
(CAP)はい
(F/E)マスク我々も かけますか?
(CAP)はい
(COP)かけたほうがいいです

(CAP)・・・

(F/E)オキシジェンマスクできたら吸ったほうが いいと思いますけど
(CAP)はい


(注4)「エマージェンシー ディセント」 とは、緊急降下のことです。
(エマージェンシー : 緊急。 ディセント : 降下)

ただし、緊急降下は、「急減圧が起きた時だけに限り行う」と、決まっているわけではありません。

緊急降下する 「何らかの必要性」 が生じれば、いくらでも行います。

例えば、飛行中に、「防氷装置」 が故障すると、気象状況などによっては、主翼やエンジン部などに着氷が生じます。
(これは飛行に大きな悪影響を与えます。最悪の場合、墜落の恐れがあります)。
その場合、気温の高い 「低高度まで」、緊急降下を行い、「着氷を自然に溶かす」 ことを試みる方法もあります。

「急減圧が起きた場合」は、最優先で緊急降下するのは、言うまでもありませんが。

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(問題点B) 客室乗務員は、「急減圧が生じたとは、一言も発言していない」 と、思えてならない。

※ 第1回目の記事から、「問題点の項番」 を引き継いでいます。

この 「第2回目、客室乗務員と、航空機関士との通話」 では、「第1回目の記事」 で述べた通り、客室乗務員の音声が、録音されていません。

そのため、客室乗務員が、どのような発言をしたのか、まったく分かりません。

航空機関士の発言から、類推するしかありません。

以下、航空の素人に過ぎない私の、推論を述べます。

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もし仮に、「自分自身が、客室乗務員だったら」、どのような行動を取るか、考えてみて下さい。

飛行中に 「客室内で急減圧が起きた」 と知覚したら、「客室乗務員」 として、どのような行動を取るか、考えてみて下さい。

速やかに、機内電話(インターホン)で操縦室を呼び出し、「客室内で急減圧が起きました」 と、急いで知らせるはずです。

客室乗務員は、「モタモタしていたら、乗客、乗員全員が、酸欠で死亡する恐れがある」 と、熟知しているはずです。

「運航乗員」 ならば、「急減圧発生時の対処方法(操縦方法)を熟知している」 のは、言うまでもありません。

一方、客室乗務員は、操縦自体は 「素人」 です。

しかし、「急減圧発生時の対処方法」 に関して、パイロットではなく、「客室乗務員として(客室乗務員の枠内で)熟知している」 はずです。

客室乗務員は、乗客に飲み物や毛布などを配る 「サービス要員」 であるのと同時に、乗客全員の命を守る「保安要員」 でもあります。

ひとたび、乗客の命に関わる緊急事態が発生したら、「サービス要員」 をかなぐり捨てて、全面的に 「保安要員に変身」 します。

それが、客室乗務員の任務だからです。

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墜落した123便で、亡くなった客室乗務員が、「有名な手帳」を遺していたのは、当時のマスコミ報道を通じて、多くの人たちが記憶していると思います。

いわゆる 「迷走飛行中」 に、ある客室乗務員が、緊急着陸(不時着)を想定して、「客室乗務員として自分の取るべき行動」 を、必死で手帳に書き記しました。

青山透子著 『日航123便 あの日の記憶 天空の星たちへ』 (マガジンランド)に、「その具体的な内容」 があります。

一部引用します。

※ 読みやすくするため、「原文にはない改行」 を加えています。

(引用A)
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「おちついて下さい ベルトをはずし 身のまわりを用意して下さい 荷物は持たない 指示に従って下さい → PAX(注5)への第一声
(注5)「乗客(パッセンジャー)」 を表す用語(パックス)。

各DOOR(注6)の使用可否 機外の火災C’K(注7)
(注6)「客室ドア」 のこと。
(注7)「チェック(点検・確認)」 を表す簡略表現。

CREW間C’K(注8) → 再度ベルトを外した頃
(注8)「CREW」 とは、ここでは「客室乗務員」 を表す用語(クルー)。
    「客室乗務員同士で、各自やるべきことを確認し合う」 という意味ではないかと思います。
    あるいは、「負傷などしていないか、相互に確認し合う」 という意味かもしれません。

ハイヒール 荷物は持たないで

前の人2列 ジャンプして Jump and sit

機体から離れてください Go to a safe area

(中略)

火災 姿勢を低くしてタオルで口と鼻を覆って下さい
-----------------------------------------------------------------------------
(引用A、以上)

これは、まさに、「客室乗務員は、保安要員だと自覚している」 強烈な現れと言えます。

なお、同書によれば、「青山著者」は、元・日本航空の客室乗務員です。

墜落した123便に乗務し、亡くなった12名の客室乗務員の内、6名が、かつて著者と同じグループに属しており、著者は後輩だったとのことです。
(墜落当時、著者は、国際線に乗務していました)。

この 「手帳の内容」 に対して、青山著者は、以下のように賞賛しています。

一部引用します。

※ 読みやすくするため、「原文にはない改行」 を加えています。

(引用B)
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エマージェンシー訓練そのものである。

陸上で不時着した場合、火災を想定しての緊急脱出である。

自分の担当ドアが開くか、または使えるかをチェックして開けるかどうかを判断する。

スライドという膨らました緊急脱出用滑り台は、とがったものやハイヒールなどで傷がつくと使い物にならなくなる。

そこでハイヒールや荷物を持たないで、一気に滑り降りてもらうためのインフォメーションだ。

全員が脱出する時間は九十秒以内が原則(注9)、指示がもたついていては意味がない。
(注9)「単なる原則ではなく」 、民間の旅客機では、「90秒以内に全員が必ず脱出できる」 ように、非常口の必要数などが、国際的に規定されています。

前山さんは(注10)不時着したらすぐに乗客を誘導できるように、と考えて揺れる機内で必死にメモを書いたのだ! 
(注10)同書での仮名です。

それを日本語だけではなく、英語も……。

信じられないほどの責任感……。

驚くほどの冷静さ……。

ふんわりした雰囲気を醸し出す彼女から、想像もつかないほどの強さを感じる。
-----------------------------------------------------------------------------
(引用B、以上)


さらに、青山著者は、以下のようにも述べています。

一部引用します。

※ 読みやすくするため、「原文にはない改行」を加えています。

(引用C)
-----------------------------------------------------------------------------
私たちが訓練で習得したことは、さすがにすべてを網羅出来るものではない。

そしてあのように異常な状況の下、訓練と職業意識だけですべての人たちが、その行動を成し遂げられるものではないと私は思う。

専門的な訓練を受けた人間が特別に強いわけでもなんでもないのだ。

何が彼女をそこまで強くしたのだろうか……。
-----------------------------------------------------------------------------
(引用C、以上)

青山著者の言いたいことは、分かります。

それでもなお、同意できない思いがします。

「専門的な訓練を受けた人間が特別に強いわけでもなんでもないのだ」

これは、論理が逆です。

人間は、誰もが同じです。

「特別な人間」 などは、存在しないとも言えます。

だからこそ、航空会社は、徹底的に訓練を行い、「特別な人間に、仕立て上げる」 のです。

客室乗務員として、緊急事態に的確に対処できる、「特別な人間を作り上げるため」 にこそ、厳しい訓練を意識的に行うのです。

訓練生を 「いじめるため」 に、厳しい訓練を行うのではありません。

「訓練と職業意識だけですべての人たちが、その行動を成し遂げられるものではない」のは、人間を「放っておいたら」 その通りです。

だからこそ、すべての客室乗務員が、的確に行動できるように、「必要とする訓練を徹底的に行う」 のです。

「保安要員」 としての、「強い職業意識」 を植え付けるのです。

ただし、そこから先は、著者が指摘するように、各自の性格や意欲の度合い、生まれながらの資質などに左右されるのは、当然です。

必死で努力しても訓練に合格できず、心ならずも、客室乗務員の道から去って行った人々も、一方では、少なくないのではないかと思います。

それは、人間として、仕方がないことです。

パイロットの厳しい操縦訓練も、同じです。

「どんな緊急事態に遭遇しても、パイロットである自分の操縦能力で、絶対に乗り越えてみせる」という、訓練実績に基づく強い自信を身につけさせるために、想定可能な、ありとあらゆる緊急事態の操縦訓練を、航空会社が行うのです。

これも、パイロット訓練生を 「いじめるため」 に、厳しい訓練を行うのではありません。

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青山著書に登場した、この客室乗務員と、航空機関士と通話した客室乗務員が、同一人物か、別人か分かりません。

したがって、単純には言えませんが、「航空機関士と通話した客室乗務員」 も、青山著書の客室乗務員と同様の、「保安要員としての強い職業意識」 があると思えてなりません。

そのような人物が、前述のように、「客室内で急減圧が発生した」 と知覚したら、どのような行動を取るか?

最優先で、「客室内で急減圧が発生しました」 と、運航乗員に対して発言(報告)するはずです。

そう発言しなかったら、明らかに不自然としか、言いようがありません。

なぜならば、前述のように、「モタモタしていたら、乗客、乗員全員が、酸欠で死亡する恐れがあると、熟知しているはず」 だからです。

客室乗務員の訓練として、「急減圧時の対処方法」 も訓練を受けているのは明らかです。

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ところが、航空機関士の発言を見る限り、客室乗務員が、そのような発言をしたとは、とても思えません。

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オキシジェンプレッシャーどうですか?

オキシジェンマスクおっこってますか?

あーそうですか
じゃー
オキシジェンプレッシャー
あー その
PO2ボトルちゃんとつけてください
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これが、第2回目の通話で、「航空機関士の、最初の発言」 です。

客室乗務員から、「急減圧が発生した」 と言われたら、「こんな、のんびりした」 応答など、絶対にしないはずです。

例えば、「本当か?! 間違いないか?!」 などと、「驚いたように反応する」 はずです。

そして、直ちに、機長や副操縦士に向かって、「客室で急減圧が発生しました」 と急いで告げるはずです。

もちろん、客室乗務員との通話を切らず(通話を保持して)、そのまま、機長たちに急いで告げるはずです。

なぜならば、運航乗員は、「モタモタしていたら、乗客、乗員全員が、酸欠で死亡する恐れがあると、熟知している」 からです。

換言すれば、「急減圧が生じたら、所定の操作手順を踏んだ上で、機長の指示を受け、直ちに緊急降下を行うのが当然」 と、熟知しているからです。

もし仮に、「自分自身が、航空機関士だったら」、どのような行動を取るか、考えてみて下さい。

そうすれば、誰もが、このような行動を取るはずだと、理解できると思います。

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この件は、次回(第3回目)に引き続きます。

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以下、長文のため、第3回目に続きます。

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