JAL123-「スコーク77」に関する、大きな「虚論」(1/8) ― 2015年12月10日
(修正) 「当記事の要点」を全部削除しました。<R5/2023-8-4>
「なくても良い」と判断しました。
同時に、「見出し」としての<当記事の要点><記事本文>も削除しました。
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墜落した日本航空123便のボイスレコーダー記録において、「スコーク77(正しくは7700)」に関して、インターネット上で、大きな誤解をしばしば見かけます。
さらには、市販の図書でも、同じ誤解が生じています。
ところが、これに対する指摘をまったく見かけません。
今後も、この「誤解」が増加し、定着するのは、非常に好ましくありません。
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この誤解の「震源地」は、池田昌昭著『御巣鷹山ファイル2-JAL123便は自衛隊が撃墜した』(文芸社)です。
池田昌昭著者は、「スコーク77」に関して、大変失礼ながら、非常にでたらめな受け止め方をしています。
同書の「著者紹介」を見ると、同氏は文化系の人物で、理工系ではないのが明らかです。
まして、航空や軍事(特に軍事航空)には、まったくの素人と思います。
同氏は、日航123便事件に接して、航空や軍事をいろいろ勉強し、情報収集し、事件の真相を明らかにするため、何冊もの本を著したものと思います。
その限りでは、私とは比較にならないほど、はるかに優秀な人物と言えます。
ところが、「スコーク77」に関して、大変失礼ながら、まったくの「虚論を吹聴する」状況に陥っています。
「ICAO(国際民間航空機関)条約・付属書」の内容を「曲解した」のが、主な原因ではないかと思います。
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同上の池田著書P.59 『2 被要撃信号「スコーク77」』
P.63 『3 要撃軍用機』
この部分には、事実誤認に基づく「虚論」が満ちあふれています。
問題点が多すぎ、とても一言では説明しきれません。
(主な問題点1)
「スコーク77(正しくは7700)」は、船舶のSOSと同じ「遭難信号」です。著者の言う「被要撃信号」ではありません。
(主な問題点2)
著者は「ICAO(国際民間航空機関)条約・第2附属書」の内容を曲解しています。そのため、著者は「被要撃信号」と思い込んでいます。
(主な問題点3)
著者は「要撃」の意味を誤解しています。
(主な問題点4)
著者は「要撃(インターセプト)」と「攻撃(アタック)」を混同しています。
(主な問題点5)
123便が、自衛隊機の「要撃」を受けることは、本来あり得ません。
(主な問題点6)
「要撃機」が使う言語は、著者の言う「4語」だけではありません。
どんな言葉でも、自由に使えます。
「4語」しか使わない(使えない)という著者の主張は、完全な誤りです。
※これ以外にも、いろいろ問題があります。
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素人であろうが、本を出版すれば、社会的責任が自動的に発生します。
もし、本の内容に誤りなど不具合があれば、社会の側から指摘を受けるのは、当然の成り行きです。
当記事は、申し上げるまでもなく、池田昌昭著者に対して、個人攻撃や誹謗(ひぼう)中傷などを意図したものではありません。
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「スコーク77(正しくは7700)」とは何か、念のため説明します。
航空機は、さまざまな機器を搭載しています。
その一つが「ATCトランスポンダ」です。
※ATC=エー・ティー・シー。
図1 全日空747型機 ATCトランスポンダ制御器
(出典: 『ザ・コクピット』2003年1月1日 イカロス出版)
※※ 図を参照しながら、本文をご覧になる場合、当記事を 「二つのタブ」 で同時に開き、一方のタブを 「図の表示専用」 にすると、非常に便利です。
この数字自体を指して、「スコーク」とも言います。
通常は、自機の「便名」(換言すれば、どの機体であるか)を、地上の「管制レーダーで識別する」ための信号として用います。
どの数字を使うかは、「管制機関」が指定します。
当然、1機ごとに数字の組み合わせが異なります。それによって、各機を識別できます。
図2 ATCトランスポンダ制御器 パネル説明
(出典: 『航空工学講座10 航空電子・電気装備』 日本航空技術協会)
※上図で、2個ずつ4個ある「応答コード設定ノブ」を回して、4桁の数字を、それぞれ合わせます。
※、制御器ではなく、はるかに大きな「ATCトランスポンダ本体部」は、操縦室の床下、「電子機器室」内に装備しています。
ところが、エンジン故障、無線機故障で通信不能、など、「特定の緊急時」には、「特定の数字」を設定し、それを送信します。
「スコーク77」は、前述のように「遭難信号」です。「特定の数字」です。
エンジン故障に限らず、機体が重大な損傷を受けるなどして、「最優先で緊急着陸」する必要がある時に、この数字を設定し、送信します。
緊急着陸が出来ず、墜落せざるを得ない時などにも、これを送信します(送信する余裕があれば)。
上述のとおり、4桁の数字です。
つまり、「スコーク77」は、正しくは「スコーク7700」です。
「7700」を送信した時、地上の管制官が「遭難信号」と認識します。
図3 地上のATCトランスポンダ用アンテナ
(出典: 『実用航空無線技術』 情報通信振興会)
運航乗員ならば、誰でも、「遭難信号のスコークは7700」と熟知しています。
そのため、123便ボイスレコーダー記録では、乗員たちが「スコーク77」と、後2桁の「00」を省略する、簡略発言をしました。
そのため、ここでは、以下、原則として「スコーク7700」と表現します。
なお、「スコーク7700」の送信は、機長の指示がなければ、絶対に行えません。
「遭難信号」の送信を決定するのは、非常に重い行為であり、最高責任者である機長にしか出来ないからです。
また、その時の状況によっては、これを送信したくても出来ない場合も、当然あり得ます。
一方、この送信以前に、地上と無線で音声交信し、「遭難状況にあると伝えた場合」は、「スコーク7700」の送信をわざわざ行う必要はありません。
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