「オスプレイ事故」に関する、「ある著名科学者」の批判文に「重大な誤り」があります(1) ― 2017年08月30日
当ブログで、以前、『ビッグイシュー日本版』という雑誌を紹介しました。
(既存の記事)
『「ビッグイシュー日本版」購入は立派な「ボランティア活動」』
2015年12月28日
http://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2015/12/28/7964137
同誌に、『宇宙・地球・人間 -- 池内 了の市民科学メガネ』という、「連載コラム欄」があります。
(1ページを、丸々を費やす、分量があります)。
この9回目に、米軍の「オスプレイ事故」に関連して、「批判する文章」が載っています。
(2017年5月15日号、VOL.311)
題名: オスプレイ=未亡人製造飛行機のわけ
昨年12月に、沖縄で起きた、「空中給油の失敗」による、墜落(不時着)事故に関連する、文章です。
著者である、「池内 了(いけうち・さとる)」氏は、高名な科学者だと思います。
しかし、航空、特に軍事航空には、まったくの専門外としか思えません。
同氏の文章を読むと、そうとしか思えません。
事実誤認が、いくつか、あります。
特に、「重大な事実誤認」が、少なくとも、2点あります。
また、事実誤認とまでは言えなくても、誤解を招く、非常に紛らわしい発言もあります。
同氏に限らず、オスプレイ機に対して、批判するのは自由です。
しかし、事実誤認や、それに類する事柄に基づいて、ピント外れな批判をすれば、かえって「オスプレイ賛成派の『正当な反論』を招き」、逆効果になるのは、明らかです。
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当記事は、著者「池内 了」氏に対する、個人攻撃や、誹謗 《ひぼう》 中傷などが目的ではありません。
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念のため申し上げますが、私は、「オスプレイ機の肩を持つ」つもりは、まったくありません。
それどころか、オスプレイ機に限らず、米軍基地自体が、日本に存在するべきではないと、考えています。
「独立国である日本」の領域に、米軍に限らず、「他国の軍隊が、不当に居座る」のは、国際的な反社会的行為です。
日本の「国家としての主権」を、公然と侵害する、国際的な「不法行為」です。
したがって、すべての米軍基地を、沖縄を含めて、日本の全領域から、撤去するのが当然です。
ところが、日米間には、以下の「特約」があります。
(A)日米安保条約
(B)日米地位協定
(C)これらの上位に位置する、複数の密約
これらによって、「独立国である日本に、米軍が居座るのは、正当な行為である(合法的)」、ということになっています。
そのため、オスプレイ機の日本配備に限らず、米軍は、「やりたい放題、やりまくって」います。
米軍や、米国にとって、それは、「ちっとも不法行為ではありません」。
完全に、正当な行為です。
そのためにこそ、上記(A)(B)(C)を、日米両国政府が、意識的に存在させているのです。
上記(A)(B)によって、米国が日本を軍事的に守っているというのは、あくまでも「建前」に過ぎません。
この建前を「口実にして」、実際は、米国が、日本を「完全な奴隷国家として、抑え込んでいる」のです。
「この根本問題を放置して」、いくら、オスプレイ反対を叫んでも、何の効果もない、まったく無意味な、猿芝居に等しい、「自己満足に過ぎません」。
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さらには、オスプレイ機が、「墜落を繰り返す危険な機体だから反対する」、ということは、「危険でなければ、反対しない」という論理になってしまいます。
もし仮に、オスプレイ機とは異なる、「危険ではない機種の軍用機」を、米軍が持ち込めば、反対できなくなります。
「危険ではない機種の軍用機」が、オスプレイ機以上に、「わがもの顔で、やりたい放題、飛び回っても」、反対できなくなります。
これでは、「やぶ蛇」です。
それを防ぐためにも、オスプレイ機が、「墜落を繰り返す危険な機体だから反対する」という論理に、必要以上にしがみつくのは、避けるべきです。
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私は、今までも、しばしば述べているように、航空に関しても素人です。
そのため、当記事自体に、図らずも「事実誤認」があるかもしれません。
この点、あらかじめ「お断り」しておきます。
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以下、本題に戻ります。
<1.重大な事実誤認>
結論から、先に述べます。
飛行中に、「いったんプロペラの回転を止める」ことは、あり得ません。
「池内 了」氏の文章を、一部引用します。
(引用A)
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たとえば、ヘリコプターモードから通常の航空機モードヘ切り換える時、いったんプロペラの回転を止めて、回転軸を地面に垂直方向から水平方向に90度変えなければなりません。
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(引用A、以上)
「引用A」で、「…… いったんプロペラの回転を止めて、……」とあります。
こんなことは、あり得ません。
これは、完全な間違いです。
例え、「いったん」であっても、飛行中に「プロペラの回転を止めたら」、たちまち墜落の危険性が生じます。
(注) オスプレイ機の場合、プロペラの正式名称は、「プロップ・ローター」です。
しかし、「池内 了」氏の文章では、プロペラとの表現をしているので、紛らわしさを防ぐため、以下、「プロペラという表現」を、そのまま使うことにします。
(参考) 「プロップ・ローター」で、「プロップ」は、通常のプロペラを意味します。
「ローター」は、ヘリコプタの回転翼そのものを意味します。
オスプレイ機に限らず、すべてのプロペラ航空機は、「飛行中に、プロペラの回転が、絶対止まらないように」、関係者すべてが、最善の努力をしているのは、言うまでもありません。
それは、「固定翼機」だけではなく、「ヘリコプタ」も、同じです。
なお、「関係者」とは、パイロット、整備士、航空機メーカーの設計者や製造技術者、…… 等々です。
オスプレイ機の、「飛行モード」(飛行形態)には、3種類あります。
(1) 固定翼モード
(2) 垂直離着陸モード
(3) 転換モード
(1)固定翼モードは、「引用A」で述べている、「通常の航空機モード」に相当します。
プロペラの向き(回転面)が、「普通の固定翼機」と同様に、機体の正面を向いています。
(2)垂直離着陸モードは、「引用A」で述べている、「ヘリコプターモード」に相当します。
プロペラの向き(回転面)が、ヘリコプタと同様に、機体の上に向いています。
(3)転換モードは、プロペラの向き(回転面)が、機体正面に対して、上方向に1度から84度の可変範囲に向いています。
上記の、(1)固定翼モードから、(2)垂直離着陸モードに、切り替える場合、逆に、(2)垂直離着陸モードから、(1)固定翼モードに切り替える場合にも、この(3)転換モードを用いるのは、言うまでもありません。
これらの、「モード変更による飛行」を撮影した動画を、2件、示します。
『オスプレイ MV-22 Osprey RIAT 2012』<動画>
2012/07/07 に公開
<Tonkatsu298>
https://www.youtube.com/watch?v=UR2IBQiBzIg
『MV-22 オスプレイ 旋回しながら水平飛行からモード転換』<動画>
2015/05/06 に公開
<ヒコーキ・アイランド -カメラ部->
https://www.youtube.com/watch?v=P5CD5dQUCEc
ご参考までに、「解説記事」も示しておきます。
『V-22 (航空機)』
最終更新 2017年8月27日 (日) 06:17
<ウィキペディア>
https://ja.wikipedia.org/wiki/V-22_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)
※ 当ブログ(アサブロ)は、日本語を含むURLに(事実上)対応していないので、お手数ですが、手作業でアクセスして下さい。
※ この記事中で、「エンジンナセル」とは、プロペラ軸の部分も含め、エンジン全体を、外側から覆 《おお》 っている「収納部」とも言える、「筒状の構造物全体」を指します。
「引用A」で述べている、飛行モードを変換する時に、「いったんプロペラの回転を止める」ことは、あり得ません。
常にプロペラの回転を続けるためにも、オスプレイ機では、「プロペラの向きを変える時」に、エンジン部(エンジンナセル全体)も、「同時に向きを変える」、複雑な機構になっています。
一方では、この複雑な構造が、事故を招く大きな要因と言えます。
だからといって、「いったんプロペラの回転を止める」というような、「暴論を吐くのは、論外」です。
「引用A」も含めて、一部引用します。
※ 読みやすくするため、原文にはない改行を、それぞれ加えています。
(引用B)
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たとえば、ヘリコプターモードから通常の航空機モードヘ切り換える時、いったんプロペラの回転を止めて、回転軸を地面に垂直方向から水平方向に90度変えなければなりません。
ところが、ヘリコプターモードでプロペラが回転しないと機体は浮き上がりませんから、素早く回転軸の方向転換ができなければ落下せざるを得ないのは明らかです。
つまり、モード転換のときに少しでも手間取ると地上に激突する事故を引き起こしてしまうのです。
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(引用B、以上)
※ 第1行目は、「引用A」そのものです。
「引用B」の2行目を見ると、「プロペラの回転を止めたら、機体が墜落する」と、著者自身が、明確に知っていると、解釈できます。
それは、取りも直さず、「プロペラの回転を止めるはずがない」と、著者自身、認識していると、思えてなりません。
にもかかわらず、なぜか、「いったんプロペラの回転を止める」という、「暴論を吐いて」います。
そのため、両者の、「現実離れした矛盾」に対して、整合を取るため、「新たな暴論を吐く」はめになりました。
それが、「引用B」の2行目後半と、3行目です。
「…… 素早く回転軸の方向転換ができなければ落下せざるを得ない ……」
「つまり、モード転換のときに少しでも手間取ると地上に激突する事故を引き起こしてしまう ……」
オスプレイ機の「飛行モード」は、3種類あると、前述しました。
その内、「(3)転換モード」では、プロペラの角度を、機体正面に対して、上方向に1度から84度の範囲に向けた状態で、飛行できます。
「…… モード転換のときに少しでも手間取ると地上に激突する ……」わけではありません。
ただし、この「(3)転換モード」は、離陸や着陸などの時に、一時的に用いる、飛行モードです。
この「(3)転換モード」のまま、巡航飛行を行うわけではありません。
だからといって、「いったんプロペラの回転を止めるので、モード転換のときに少しでも手間取ると、地上に激突する」のは、現実離れした暴論と言わざるを得ません。
換言すれば、「(3)転換モード」で飛行中も、「プロペラは回転し続けている」のです。
したがって、「いったんプロペラの回転を止めるので、モード転換のときに少しでも手間取ると、地上に激突する」という論理が、成立するはずがありません。
<2.重大な事実誤認>
さらに、別の一部を引用します。
(引用C)
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逆に、通常の航空機モードからヘリコプターモードに切り替えようとプロペラを止めた場合、急減速に急降下が伴うということになります。
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(引用C、以上)
この「引用C」も、前記の「引用A」と、同じです。
「引用C」でも、「通常の航空機モードからヘリコプターモードに切り替えようとプロペラを止めた場合、……」と述べています。
この場合も、「プロペラを止める」ことは、あり得ません。
これも、「むちゃくちゃな、暴論」です。
したがって、この「引用C」の論理も、成立しません。
ただし、エンジンや機体が故障して、「本当にプロペラの回転が停止した場合」は、飛行速度や、高度の急速な低下が生じる可能性は、十分あり得ます。
ところが、この「引用C」では、そのような「事故時の話」を述べているのではありません。
「平常時の話」を述べているのは、明らかです。
そういう意味においても、「引用C」の論理は成立しない、と言わざるを得ません。
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<以下、長文のため、第2回目に続きます>
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