JAL123-スコーク77に関する、大きな「虚論」(3/8) ― 2015年12月12日
(修正) 「当記事の要点」を全部削除しました。<R5/2023-8-4>
「なくても良い」と判断しました。
同時に、「見出し」としての<当記事の要点><記事本文>も削除しました。
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https://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2015/12/11/7945326
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前回(2/8)に引き続き、池田著書の具体的な問題点の分析を行います。
池田昌昭著『御巣鷹山ファイル2-JAL123便は自衛隊が撃墜した』(文芸社)
同書P.59~60 『2 被要撃信号「スコーク77」』を引用します。
(引用B)
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そしてさらに言えば被要撃信号「スコーク77」を発したJAL123便にたいして、軍用機もしくは軍事管制所が指示に従うように「誘導」したのである。
(中略)
軍用機の側から言わせれば、JAL123便が被要撃信号「スコーク77」を発したから、ICAO(国際民間航空機関)条約「付属文書2」の「民間航空機に対する要撃」に拠り、誘導指示したと。
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(分析B)
[引用Bで、下側の行について]
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軍用機の側から言わせれば、JAL123便が被要撃信号「スコーク77」を発したから、
ICAO(国際民間航空機関)条約「付属文書2」の「民間航空機に対する要撃」に拠り、誘導指示したと。
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これは、著者のまったくの誤解です。
著者は、正反対に解釈しています。
ICAOが作成した「国際民間航空条約・第2附属書 航空規則」の中に、「添付A 民間航空機の邀撃(ようげき)」の規定があります。
この中の、「5.被邀撃機による行動」を引用します。
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2.1 他の航空機によって邀撃されている航空機は、直ちに、下記のことを行わなければならない。
a)~c) 省略
d) 二次捜索レーダー(SSR)トランスポンダーを装備している場合、航空交通業務機関当局から別段の指示がない限り、モードA、コード7700を選択する。
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※「二次捜索レーダー(SSR)トランスポンダー」とは、ATCトランスポンダのことです。
※「航空交通業務機関当局」とは、民間航空の管制機関のことです。
※「モードA」は、ここでは考慮する必要がないので、説明は省略します。
要するに、d) の規定は、「ATCトランスポンダを装備している航空機は、民間の管制機関から、スコークに関して、特に指示されない限り、スコーク7700を送信せよ」という意味です。
ここで大事なのは、「2.1 他の航空機によって邀撃されている航空機は、直ちに、下記のことを行わなければならない。」の部分です。
「他の航空機によって邀撃されている航空機は」と、明記しています。
軍用機に「要撃」されたら、それに基づいて、「スコーク7700を送信せよ」と規定しているのです。
「スコーク7700を送信したから、要撃される」わけでは、決してありません。
ところが、著者は、123便が「スコーク7700を送信したので」、それに応じて、自衛隊機が「要撃した」と、まったく逆の受け止め方をしています。
順序が逆です。
大変失礼ながら、素人ならではの、まったくの考え違いです。
スコーク7700は、「遭難信号」です。
民間機がエンジン故障など、何か重大な不具合が生じ、救援を求めるために「遭難信号」を送信したら、救援が来ないで、代わりに「軍用機に要撃された」のでは、おちおち「遭難信号」を出していられません。
ICAOに限らず、どこの組織、機関であっても、そんな「むちゃくちゃ」な規定をするはずがありません。
[ICAOは、なぜこの規定を設けたのか?]
私が知り得た範囲では、その理由はどこにも明記していません。
やむなく推測しますが、「自分の機が、軍用機によって要撃された事態を、本来の管制相手である、民間航空の管制機関に伝えるのが目的であろう」と、思います。
軍用機が要撃してきた以上、軍隊側は、この機体を要撃中だと、分りきっています。
わざわざ、被要撃機が、軍隊に対して、スコーク7700を送信するまでもありません。
ところが、民間機である被要撃機にとって、本来の管制相手(無線交信の相手)である、民間航空の管制機関側は、軍隊から連絡を受けない限り、その機体が、要撃を受けているとは分りません。
そのため、被要撃機が、みずから速やかにスコーク7700を送信するよう、規定しているものと思います。
スコーク7700を伝える相手は、軍隊ではなく、民間航空の管制機関です。
もちろん、音声の無線交信で、民間航空の管制機関に「要撃を受けている」と伝えることもできます。
ところが、要撃機側が無線で呼びかけてきた時、あるいは「手信号」などで呼びかけてきた時は、それに応える必要があります。
結果的に、管制機関側に伝える暇がなくなります。
それを少しでも防ぐために、「まずは、スコーク7700を送信せよ」と規定しているものと思います。
[「被要撃信号」と解釈するのは、不適切]
「自機が要撃を受けていると通知する」という意味では、スコーク7700は、「被要撃信号」と言えなくもありません。
しかし、それは、池田著者の誤解に基づく「無意味な私見」に過ぎません。
スコーク7700は、あくまでも「遭難信号」です。
民間機が要撃を受けた時に送信するスコーク7700の意味は、「貴国を攻撃する意図のまったくない、無害な民間機である自機が、図らずも貴国の軍用機から要撃を受ける、不本意な『緊急事態に陥っている』」という意味です。
このような緊急事態に対し、緊急事態だと伝えるために定めてあるスコーク(使用可能なスコーク)は、7700しかありません。
そのため、本来は「遭難信号」であるスコーク7700を、要撃を受けた時にも使うように、いわば「流用せよ」と、規定してあるのです。
[ICAOは民間航空の「業界団体」]
ICAOは、国連の一員である、「国際民間航空機関」です。
全世界の「民間航空界」のための、国際的な組織です。
民間機を「縛(しば)り、抑え付けるため」の組織ではありません。
世界中どこの場所でも、民間機が安心して、自由に飛行できるように、環境を整えるための組織です。
民間機を「護る」ための組織です。
「要撃を受けたら、スコーク7700を送信せよ」の規定も、その基本方針から定めたものです。
要撃機、つまり、軍隊側のために定めたものではありません。
要撃を受けた民間機を「護る」ために、定めたものです。
それは、以下の規定からも、はっきりと分ります。
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1.1 a) 民間航空機の邀撃(ようげき)は、最後の手段としてのみ実施すること。
b) 実施する場合、予定経路に航空機を復帰せしめること、国内空域も境界外に出るよう指示すること、禁止、制限又は危険空域から退去せしめるように誘導すること。
又は指定飛行場に着陸するよう指示することが必要でない限り、邀撃は、航空機の識別の確認のみにとどめること。
c) 民間航空機の邀撃演習を行わないこと。
(以下省略)
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上記は、『附録2 民間航空機の邀撃 1.各国によって遵守されるべき諸原則』を一部引用しました。
これらの規定は、邀撃を行う国の政府に対して、「これらの配慮を持って邀撃をするように」と要求しているのです。
要撃を受けた民間機を「護る」ための規定です。
要撃機に対して、「要撃のやり方」を教えてあげているのではありません。
[引用Bで、上側の行について]
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そしてさらに言えば被要撃信号「スコーク77」を発したJAL123便にたいして、軍用機もしくは軍事管制所が指示に従うように「誘導」したのである。
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すでに述べたように、スコーク7700は「遭難信号」であり、「被要撃信号」ではありません。
さらに、自衛隊が、123便を「要撃」することはあり得ません。
したがって、この行も、池田著者の誤解による、無意味な発言です。
自衛隊側が、123便を「攻撃した」と、著者が考えているならば、「要撃した」ではなく「攻撃した」と表現しなければ、話がめちゃくちゃになります。
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ICAOが作成した、「国際民間航空条約(日本語訳版)」は、「航空図書館(日本航空協会)」で閲覧できます。
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