「オスプレイ事故」に関する、「ある著名科学者」の批判文に「重大な誤り」があります(3) ― 2017年09月16日
第2回目の記事から続きます。
http://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2017/09/10/8673731
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<4.空中給油飛行に関する誤解>
今回も、前回(第2回目)に引き続き、著者「池内 了(いけうち・さとる)」氏の文章を引用します。
(引用F)
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空中給油の場合、通常では給油機と航空機が長い給油ホースでつながっていて、給油中ずっと同じ高度を同じ速度で飛行し続けるという離れ業を敢行しなければなりません。
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(引用F、以上)
「引用F」で、「空中給油の場合、…… 離れ業を敢行しなければなりません。」とあります。
この中で、「離れ業」に着目して下さい。
結論から先に述べると、「離れ業」の表現は、現実離れした「非常に、大げさ」と言えます。
この「引用F」で、「ずっと同じ高度を 同じ速度で 飛行し続ける」とあります。
この飛行は、「編隊飛行」そのものと言えます。
ところが、空軍に限らず、陸軍でも、海軍でも、軍用機のパイロットは、「編隊飛行」が出来て、当然です。
「編隊飛行」は、2機、あるいは、3機以上の、複数の航空機が、「隊列を組んで、ずっと同じ高度を、同じ速度で、飛行し続ける」ことによって、成り立ちます。
(図1) 編隊飛行の一例
(出典: 『航空情報』2017年10月号 せきれい社)
※ 英国で行われた、「軍用機の航空ショー」での編隊飛行なので、観客を喜ばせるために、一部の機体がスモーク(煙)を引いています。
※※ 図を参照しながら、本文をご覧になる場合、当記事を「二つのタブ」で同時に開き、一方のタブを「図の表示専用」にすると、非常に便利です。
別の表現をすれば、「自機が属する編隊の、リーダー機(編隊長機)に、自機の動きを、ぴったり合わせ続ける」ことによって、「編隊飛行」は成り立ちます。
「自機の動きを、ぴったり合わせ続ける」ためには、「リーダー機(編隊長機)の飛行高度、飛行速度、飛行方向などに、ぴったり合わせ続ける」のは、当然です。
ただし、高度に関しては、「リーダー機(編隊長機)の飛行高度とは、多少異なる高度」で飛行する場合が、少なくありません。
その場合、リーダー機(編隊長機)との間の、「高度差を、一定に保ち続ける」のは、言うまでもありません。
3機以上の編隊飛行では、「リーダー機(編隊長機)との位置関係」だけではなく、「他の僚機」との、それぞれの位置関係も、常に一定に保つ必要があります。
このような「編隊飛行」が出来なければ、軍のパイロットとしては、失格です。
パイロット訓練生時代に、「編隊飛行の科目」を達成できなければ、パイロットの素質がないとして、訓練生の資格を失い、地上勤務などの部隊に配属替えとなってしまうはずです。
民間機の場合、旅客機を見れば明らかなように、1機だけで、単独に飛行するのが、当たり前とも言えます。
ところが、軍隊の場合は、逆に、複数の軍用機が、一体となって行動するのが、当たり前だからです。
例えば、現代では、戦闘機は、必ず「2機一組の単位」で行動します。
戦闘機が、1機だけで、単独に行動するのは、特に理由がない限り、あり得ないと言えます。
さらには、異なった機種同士での「編隊飛行」も、珍しくありません。
(図2) 異なった機種同士での編隊飛行
(出典: 『航空情報』2017年5月号 せきれい社)
※ 航空自衛隊の「展示飛行」における、編隊飛行の一例です。
例えば、戦闘機が、輸送機を「護衛」する場合、「戦闘機」にとって、飛行速度が遅い「輸送機」に合せて、編隊を組む(維持する)必要があります。
通常よりも遅く飛行するためには、その分、「機首を上に向けながら」飛行する必要があります。
通常よりも、「機首を上に向けたまま、編隊を維持して飛行する」という意味です。
(機体を、上昇させるという意味ではありません)。
(エンジン出力が一定のまま、機首を上に向けると、飛行速度が、その分、低下します)。
「同一の機種同士で行う編隊飛行」よりも、操縦が、それだけ難しくなります。
このような難しさを乗り越えて、編隊飛行を実行しています。
軍のパイロットは、「編隊飛行を行う能力があって当然」と言えます。
空中給油のための飛行も、「編隊飛行」の一種です。
(図3) 空中給油飛行の一例
(出典:『航空情報』2016年11月号 せきれい社)
※ 左側の双発機が、「空中給油機(母機)」で、右側の戦闘機(2機)が、「同時に空中給油を受けて」います。
(これは、自衛隊機ではなく、米軍機です)。
空中給油を行う場合、言うまでもなく、「空中給油機(母機)」の飛行位置が、「ふらふら」していたら、話になりません。
そのため、「空中給油機(母機)」は、出来る限り、一定の速度で、水平直線飛行を行うはずです。
「空中給油機(母機)」が、通常の「編隊飛行」における、「リーダー機(編隊長機)」に相当します。
空中給油を受ける「受油機」側が、「リーダー機(編隊長機)」である、「空中給油機(母機)」に対して、「ぴったりと」くっついて行きます。
「図3」の場合、2機の戦闘機が、同時に、空中給油を受けています。
3機による、通常の「編隊飛行」に相当するとも言えます。
したがって、戦闘機にとっては、「リーダー機(編隊長機)」に相当する、「空中給油機(母機)」に対して、「ぴったりと」くっついて行くだけではなく、相手の戦闘機とも、常に一定の距離を保つように、考慮する必要があります。
給油が終わって、離脱する時も、他の2機との距離を置くように、注意しながら離脱します。
軍のパイロットならば、こういう操縦が、出来て当たり前と言えます。
「池内 了」著者が主張する「離れ業」は、「現実離れした表現」と言わざるを得ません。
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ただし、一方では、「空中給油飛行」は、非常に「難しい飛行」です。
「通常の編隊飛行」ならば、見た目に「正しく相互位置が合っていれば」、それで良いと言えます。
ところが、「空中給油」の場合、「給油口の位置が、正しく合っていなければ」、話になりません。
「図3」で、「空中給油機(母機)」の主翼下にある「給油ポッド」から、2本の「給油ホース」が伸びています。
この「給油ホース」は、空中に浮いています。
しかし、高速で飛行する、「空中給油機(母機)」が曳航 《えいこう》 しているので、その気流内にあり、ほぼ一定の位置にあります。
それを目がけて、戦闘機が、「給油ホース」の後方から、静かに接近します。
そして、戦闘機の機体にある「受油口」が、「給油ホースの給油口」に、ぴったり一致するように、自機の位置を微妙に調整します。
両者の位置が、正しく一致すれば、「受油口と給油口」が、一体化するように「かみ合い」、空中給油が始まります。
お互いに、高速で飛行しながら、これら一連の操縦操作を行います。
(ただし、相対的な速度差は、当然ながら、非常に小さく見えます)。
そのため、通常の編隊飛行は、いくら出来るパイロットでも、場合によっては、空中給油が、思うように出来ないこともあります。
(動画A)
『V-22 オスプレイの空中給油失敗シーン』
<ODL>
2014/11/21 に公開
https://www.youtube.com/watch?v=wH7GHL_rPeU
(動画B)
『V-22 オスプレイの空中給油失敗シーン』(注)
<Raymond Gill>
2017/01/28 に公開
https://www.youtube.com/watch?v=l4kr7yC-hp4
(注)題名が、「動画A」と、まったく同じです。何かの間違いと思います。
※「動画B」には、オスプレイ機は、登場しません(私が探した限りでは)。
※ さまざまな機種の、「空中給油失敗」を集めた動画です。
※ 昔の古い映像も、少なくありません。
※ これも、失敗場面の他に、成功場面も多少は、あるようです(説明がないので、良く分かりませんが)。
「空中給油」の場合、給油が開始しても、安心できません。
空中給油が完了するまで、「お互いの位置関係」を、ひたすら維持する必要があります。
途中で、位置関係が、「ずれると」、やはり、空中給油に失敗することになります。
これも、通常の編隊飛行と比べて、「空中給油飛行」の難しい点です。
特に、気流が悪い時には、苦労するはずです。
夜間も、難しくなるのは、言うまでもありません。
さらには、「受油機側」だけではなく、「給油機側」の操作や操縦のミスによる、失敗もあり得ます。
なお、空中給油には、「図3」のように、「給油ホース」を用いる方式と、伸縮パイプ式の「フライング・ブーム」を用いる、2種類があります。
「給油ホース」は、正しくは、「ドローグ」と言います。
伸縮パイプ式の「フライング・ブーム」は、給油機内部で、専門の操作兵員が、操作します。
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さらに、オスプレイ機の場合、第1回目の記事で述べた、2種類の飛行モードがあります。
(1) 固定翼モード
(2) 垂直離着陸モード
(第1回目の記事)
http://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2017/08/30/8662448
「(1) 固定翼モード」では、上記「動画A」の映像のように、大きなプロペラが、2枚も正面にあります。
「給油ホース」が、これに、ぶつからないように、慎重に操縦する必要があります。
「(2) 垂直離着陸モード」では、ヘリコプタと同じです。
機体の上に、2枚のプロペラ(ヘリコプタの回転翼に相当)が、回転しています。
やはり、「給油ホース」が、これに、ぶつからないように、慎重に操縦する必要があります。
ただし、通常は、「動画A」のように、「(1) 固定翼モード」で、空中給油を行うのではないかと思います。
米軍の場合、以前から、ヘリコプタの空中給油は行っています。
そういう意味では、難しいとは言えません。
一方、オスプレイ機で、「(1) 固定翼モード」での空中給油では、正面に向いている大きなプロペラを常に考慮する必要があり、ヘリコプタとは異なる、難しさがあります。
一言で言えば、「大きな危険性がある」と言えます。
さらには、オスプレイ機の「受油パイプ」が、短いとの説もあります。
(もっと、長くするべきという意味です)。
いずれにせよ、「池内 了」著者が主張する「離れ業」とは、「話の次元が異なる」と、言わざるを得ません。
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<以下、長文のため、第4回目に続きます>
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「オスプレイ事故」に関する、「ある著名科学者」の批判文に「重大な誤り」があります(4) ― 2017年09月21日
第3回目の記事から続きます。
http://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2017/09/16/8677937
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前回(第3回目)同様に、著者「池内 了(いけうち・さとる)」氏の文章を引用します。
<5.正論であるが、正論とは言えない>
(引用G)
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空中給油の場合、通常では給油機と航空機が長い給油ホースでつながっていて、給油中ずっと同じ高度を同じ速度で飛行し続けるという離れ業を敢行しなければなりません。
オスプレイだと大きなプロペラが回転して空気の流れが速く、かつ大きく変化していますから、少しでも二機の方向が狂えば給油ホースがプロペラや翼に引っかかって墜落してしまうということになりかねません。
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(引用G、以上)
※ 「引用G」の第1行目は、前回(第3回目の記事)での、「引用F」そのものです。
http://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2017/09/16/8677937
この「引用G」で、第2行目は、「正論」です。
ただし、「少しでも二機の方向が狂えば 給油ホースがプロペラや翼に引っかかって 墜落してしまうということになりかねません」と、断言するのは、いささか「言い過ぎ」です。
2機の方向が狂えば、必ず、「給油ホースが、プロペラや翼に引っかかる」と、断言までは出来ません。
「給油ホースが、プロペラや翼に引っかかる」ほど、両機の位置が、「大きく狂った場合」は、確かに「引っかかり」ます。
一方、それほど大きく狂わなければ、結果的に、「給油ホースが、プロペラや翼に引っかかる」ことは、ありません。
要するに、「『少しでも』二機の方向が狂えば」の表現が、言い過ぎと言えます。
「給油ホースが、プロペラや翼に引っかかる」ほど、「両者の位置が狂えば」、そうなる、という論旨が、的確に伝わる表現をするべきと、言えます。
さらには、「給油ホースが、プロペラや翼に引っかかれば」、必ず墜落すると、決まっているわけではありません。
「給油ホース」の方が、ちぎれたり、はじき飛ばされたりして、損傷しても、「機体」の方は、さほど損傷を受けず、無事に「緊急着陸」出来る可能性も、あり得ます。
どうなるかは、その時の状況次第、結果次第と言えます。
細かいことを、あえて言えば、プロペラよりも、翼の方が、少しだけ機体の後方にあるので、給油ホースが、翼にぶつかる前に、プロペラにぶつかる可能性の方が、はるかに大きいと言えます。
「引用G」の第1行目にある「離れ業」は、前回(第3回目の記事)で述べたように、「現実離れした表現」と言えます。
http://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2017/09/16/8677937
著者「池内 了」氏は、それに基づいて、「引用G」の第2行目へと、論理展開しています。
したがって、もし、「引用G」の第2行目が、100パーセント正論であったとしても、「引用G」全体としては、正論とは言えなくなります。
まして、上述のように、「引用G」の第2行目自体も、いささか不十分なところがあります。
100パーセント正論とまでは、言えません。
なおさら、「引用G」全体としては、正論のようであって、正論ではないと、言わざるを得ません。
「2機の相互位置が狂えば、給油ホースがプロペラや翼に引っかかって、墜落してしまう可能性がある」のは、確かに、間違いない事実です。
しかし、それを伝えるための表現が、適切とは言いがたいと、言わざるを得ません。
ただし、第3回目の記事で述べたように、空中給油飛行は、難しさがあります。
http://21utbmjdai.asablo.jp/blog/2017/09/16/8677937
危険性があるとも言えます。
まして、オスプレイ機の場合、著者が指摘するように、大きなプロペラが、2枚も機体の正面を向いています。
なおさら、危険性が高いのは、言うまでもありません。
だからこそ、その危険性を伝えるためには、可能な限り、航空機に関する、特に軍事航空に関する、「筋の通った論理展開」が、ぜひとも必要と言えます。
<6.戦闘機ではなく、輸送機>
(引用H)
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…… 通常の航空機のように高速度で飛翔できる戦闘機に「オスプレイ」という名をつけたのだろうと考えられます。
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(引用H、以上)
「引用H」を見ると、オスプレイ機のことを、「戦闘機」と表現しています。
これは、明らかに誤りです。
オスプレイ機は、「戦闘機」ではなく、「輸送機」です。
今の時代、ジェット戦闘機が、世界中に普及・定着しています。
小さな国々でも、ジェット戦闘機を、当たり前に用いています。
オスプレイ機は、ヘリコプタよりは高速ですが、プロペラ機であり、とてもジェット戦闘機には太刀打ち出来ません。
戦闘機としての能力は、初めから、ありません。
著者が、なぜ、「戦闘機」と誤解したのか、とても不思議です。
(引用I)
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海兵隊では敵地を急襲して兵員や資材を送り込む作戦に使い、空軍では戦闘・捜索・救難・兵站支援・特殊作戦などのために配備しています。
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(引用I、以上)
※ 「兵站 《へいたん》」は、厳密には、かなり広い意味を持つようです。
ここでは、武器弾薬、軍事物資や、兵員などの輸送を指しているものと思います。
「引用I」でも、「空軍では戦闘」と表現しています。
米空軍が、「戦闘用として」、オスプレイ機を使うとは、とても思えません。
米空軍では、「特殊部隊を、敵地に送り込むための輸送機」として、用いているようです。
なお、オスプレイ機も、機内に機関銃を搭載している場合もあります。
これは、「戦闘機として、搭載している」のではありません。
例えば、敵地や戦闘地域で、離着陸する場合、地上の敵部隊から、攻撃を受けた時に、それを撃退するためなどに装備しています。
いわば、「自衛用の武器」と言えます。
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<以下、長文のため、第5回目に続きます>
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